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書名 | インターネットが変える世界 |
|---|---|---|
| シリーズ | 岩波新書432 | |
| 著者 | 古瀬幸広、廣瀬克哉 | |
| 発行日 | 平成8年2月20日 | |
| 発行元 | 株式会社岩波書店 | |
| 頁数 | 新書判、214頁 | |
| 定価 | 650円 | |
| ISBN | 4-00-430432-6 |
本来は動きが鈍かったり、インターネットの速い流れと合わないのではない
かと思われる岩波書店、とくに岩波新書は長い間売り続ける本というのが基本
なのであるが、このところ岩波書店もインターネットづいている。
岩波新書のインターネット本は2冊目である。1冊目が村井純氏の
『インターネット』であった。
さて、本書は、「インターネットによって、どのように世界が変わるか」を 書こうとしたものである。インターネットの歴史的な紹介をしながら、技術的 なことにはできるだけ立ち入らずに、発展の歴史を書いている。歴史を書いて はいるが、歴史を書くのが本書の目的ではなく、その歴史の中で、どのように インターネットを支えた人々が動いてきたか、その思想を紹介している。
本書の冒頭は、『ハッカー会議』で始まっている。 もちろん、これはハッカーが今のインターネットを育てた中心人物達であるこ とをいっているのである。しかし、世間ではハッカーという言葉に誤解がある。 『ハッカー=犯罪者』という誤解である。
この誤解は、マスコミなどが盛んに「ハッカーが犯罪を犯した」などとい う誤った言葉の使い方によって世間に定着してしまった。この誤用は必ず訂正 させなければならないものである。わざわざそういうこともあって、ハッカー 会議の話題を最初にもってきたのではないかと思っているが、違うだろうか。
さて、本書での主張と思われること(私が勝手にそう解釈しただけであるが) は、大体以下のことであった。
とにかく遠く離れたコンピュータを繋ぐことから始めた。すべてはそこから 始まったのだ。お金もない、優れたコンピュータもない、それでも他のコンピュー タ利用者(研究者)との連絡をとりたいという切ない思いから始まった。
特に、日本では、法律、文部省、その他の省庁の馬鹿な軋轢によってコンピュー タの相互接続が妨害されたことが書いてある。けっこう大人しく書いてあるが、 当時は無理解な石頭共に苦労させられたものである。
阪神淡路大震災にインターネットの果たした役割は計り知れない。全世界か らの情報要求に応えていったのがインターネットであった。膨大な金をかけて 作った防災システムは全く役に立たなかった。
インターネットは、もともとは米ソ冷戦の中、核攻撃で通信かやられても連 絡可能なように設計されたものを基本にしている。その実証がこの地震で証明 されたのである。実際に、その地震のときに多くのインターネット関係者が協 力し、全世界に情報を流し続けたことは有名である。
これは説明しがたい用語であるが、インターネットの世界では非常に重要な、 基本的なことである。
本書によると(6ページ)、
コンヴィヴィアリティという用語に訳語をつけるのは難しい。辞書をひくと、 「宴会気分、陽気さ」といった訳語がついている。雰囲気はわかるが、用語と してはちょっと使えない。ともかく「みんなで一緒にいきいき楽しい」という ニュアンスの言葉である。………
要するに、皆で持てる力を出し合って、良くして行こうという姿勢である。 殆どボランティア的な思想である。そして、この思想こそがインターネットを 育てた思想である。
この思想は、企業の何でも秘密にしたがる思想とは相反する。研究で得られ た技術は徹底的に秘密にし、利益を企業で独占したがるのとは合わない。これ は企業だけではなく、今の官僚機構とも合わない。
しかし、今や企業、官庁などもインターネットを無視できなくなってしまっ た。この本では、この辺のことを紹介はしているが、特に結論も何をしたら良 いとかは何も言っていない(と思う)。
今の日本のインターネットの利用は、情報集めが主流である。WWWであち こちのページを見て、面白いのがないとかいう連中ばかりが多い。
情報を得たければ、自分から情報を発信せよ、自分から行動を起こせ、とい う主張である。
そして、情報発信は日本語で構わない、ということだ。コンピュータの相手 をする以上、英語を使わなければならないと信じてる人々が今だに多いが、日 本語でよい。インターネットで外国から日本に情報を求めて、探しにくる人々 は多い。
まあ、だいたい以上のようなことを書いているのである。一般の人に、以上 のような思想的なことを理解してもらうことを目指しているようだ。しかし、 この本を読んで、それらを理解してもらうのは難しいような気がする。
この本は良く書けているのであるが、結構、現体制に気を使いながら書いて いると思われる。現体制がどんなにコンピュータの発展、引いては一般の人々 がコンピュータ技術を享受できるのを阻害してきたかを意外とあっさり書いて いる。本当は、本人達は 「はらわたが煮えくり返っていた」に違い ない。
さて、1冊の新書で、インターネットの影響について書くのは相当難しい。 色々なことを書こうとしすぎて印象が弱いところもあるが、一般人向けの本で あり、インターネット理解のための入門書なんだから良いだろう。
「もっと、もっとガンガン書いてやんないと、結局世の為になんないんだよ な」と思われる個所は多数あった。でも、岩波新書ということで、それなりに 売れ、世間への影響も出ることと思う。