2008年5月16日 またしても、茂木氏の本を読んでしまった。 今回は、「思考の補助線」であり、正面から事物に立ち向かうのではなく、 どこかに補助線を引けば問題が見えている、開けてくるのではないかということについて 書かれている本である。 本書で何度も出てくる話に(テーマであろうか)、「世界を引き受ける」というのがある。 茂木氏が若いころ、この世の中がどうなっているか、その本質を理解してしまおうという、 要するに究極の学問について考えてみたことに関しての説明が何度も出てくる。 もちろん、何らかの解に達した訳ではない。 そういう到底不可能なことを必死で考えてみることは、確かに重要だと思うものの、 ほとんど確実に失敗するので、下手にやりすぎると本人が潰れてしまう。 何らかの研究で成果をあげなければならない現実の世界が存在し、 それなりの成果もあげ続けなければならない。 今の時代、学問はあまりに巨大で、その一部の専門家になるのさえ大変な時代になった ことは間違いない。極端に情報が増えてしまった世界で、問題を考えていく方法として、 正面から取り組むだけではなく、事象を一歩引いてながめ、どこかに補助線が引けないかを 考えてみようという本である。 しかし、どこに補助線が引けるか、そういう答えは何も示していない。 このところ、知識、学問さえサブカルチャー化してしまい、知が断片化しており、 知とはGoogleで検索して情報を得ることになってしまっている現状に対する怒りが述べられている。 世の中で適当に上手に振舞うだけなら、Googleで検索して得られる程度の情報を叡知と 思い込んでいるので済むのが事実だろうが、確かにつまらぬ事である。 冒頭で、日本では、理系、文系という考え方が根強く存在し、 未だ東京大学が入試で文科一類・文科二類・文科三類・理科一類・理科二類・理科三類 という時代錯誤なことを行っているため、他の大学がそれに習うため、 文科、理科に人間を分類してしまうことを植え付けてしまったことを批判していた。 ということは、確かに東京大学も時代錯誤だが、その他の大学の独自性のなさは さらに情無いことである。 さて、本書を読み終え、貧者として、 どこかに知の一灯でも点すことができれば、いやそれさえ大変だ、 と思った次第である。 |
ナンプレ問題 |
あまりにも人気のある脳科学者、茂木健一郎の本であるので、今迄読まないでした。 多くの脳科学者は、脳を分析的に、いわゆる今迄の科学的なと思われている方法で研究しているように思える。 しかし、茂木氏の考えはちょっと違って、その先を研究しているように思える。 題名を見ると、本書は、頭のうまい使い方の本という印象があるだろうが、違う。 脳は、そもそもどのように整理することで知識を習得するのかを書いている。 その習得方法を理解した上で、上手に自分の頭も使えという感じになっており、 具体的な脳の使い方のハウツー本ではない。 それに、そういう本だったら、私は最後まで読まない。 本書は、偶有性(contingency)について書いた本である。 万人に通用する科学が存在するが、個人としてみたとき、 必然的に起きることと、偶然起きることの間にいるということ。 偶然も、統計学的にみるとそれなりに意味がある。 生命が助かる可能性が50%と言われても、実際には助かるか、助からないかのいずれかである。 途中の状態は個人にとってはない。どっちに転ぶかは、結局偶然が大きく支配する。 個人は、生まれてくるきっかけも偶有性であり、死ぬのも偶有性である。 人と出会うのも、幸福をつかむのも、不幸になってしまうのも偶有性である。 赤ん坊が、様々な知識を身に着けていくのも、自分の周囲から様々なことを偶然に習得し、 次第に次第に知識として体系化されていく訳である。 どんどん動く赤ん坊、周囲がいろいろ反応する環境であれば、 それだけ赤ん坊の脳も発達するという。 偶有性の有効な利用として、ノーベル賞授賞者の例を挙げている。 科学的発見は、多くの場合、失敗から生まれている。 小柴氏がノーベル賞をとるきっかけになったカミオカンデも、本来計画した実験は完璧な失敗であった。 今でも成果はでていないらしい。しかし、そのときに、予想していなかった発光をみつけ、 それがニュートリノ天文学という新しい学問分野を作った訳である。 色々なことをやって、偶然さまざまなことが起きる機会を増やすことが重要とのこと。 そうしておくことで、発見のチャンスが増える訳だ。 世の中偶然が支配しているのだから何をしても無意味というのではなく、 偶然、偶有性が支配しているからこそ、より多くのチャンスにめぐりあえるように、 積極的に活動してみようとうことだ。 脳とは、結局自分の周囲に起きた様々なことを整理し続けているだけである。 そして、知には、共通の知である「世界知=科学」と、「生活知=個人」があり、 この2つの知をいかにうまく統合していくかが重要だが、まだそこまで分っていないということで本書は終る。 他の脳科学の本と違い、なかなか抽象的なことが書かれている。 脳科学を知識として知るのは普通に勉強さえすれば可能だが、 肝心なのはそうして得た知識を、いかに自分が解釈し、生活に役立てるかが重要で、 本書はそういう面について脳科学のバックグラウンドに立って書かれた本であり、 一読の価値がある。 しかし、書かれている本質を理解できたか自信がない。 2008年3月22日 |