囲碁
書名プロ棋士の思考術
大局観と判断力
シリーズPHP新書 531
著者依田紀基
発行日2008年6月27日
発行元PHP研究所
頁数新書判、192頁
定価700円(税別)
ISBN978-4-569-70111-0

囲碁の人は依田プロについてはよく知っていようが、一般の人には知られていないかもしれない。 非常に簡単に説明すると、小学校ではオール1という記録的バカであった。 しかし、あるとき囲碁を始めてしまったのだが、なんだかのめりこんでしまった。 学校の勉強はまったくできないので、このまま大人になってもどうしようもないというので、 プロをめざし、タイトルをいくつもとるような一流棋士になれたのである。 しかし、実際には波乱万丈であり、その点でも有名である。

さて、「強さとは才能でも技術でもない。大局観を持つことだ。」という帯がついていたが、 書かれている内容はちょっと違う。

最初に、いきなり、「勝つための条件」が書いてあった。8つ挙げているのだが、 1〜7は普通のことだったので省略する。 最後が、「虚仮の一念」となっていた。こけ(白痴)の方が本来の漢字だと思うのだが、 最近は、虚仮という字を使うようになって、本当の意味が伝わりにくくなってしまった。 要するに、どんな馬鹿でも、いや馬鹿だからこを一つのこと(この場合は勝つこと)に集中すれば、 途方もない結果を生むといことである。

確かに、勝ちたいという執念の強さがタイトルを防衛させ続けるのであろう。 それがなくなってしまうと、タイトルから遠ざかるのだろう。 プロの実力の差は紙一重であろう。タイトル保持者になれば、 他のプロに打ち方をしっかり研究されるわけだが、 それでも延々と勝ちつづけることがあるが、 ほとんどのタイトル保持者は、あるとき、ふっと気が抜けるのか、 急に負けだして、タイトルから遠ざかるようだ。

さて、この小学生時代に成績がオール1だったという依田プロは、 囲碁のプロ棋士になってもずっと学歴コンプレックスを持っていたそうだ。 プロは、普通はオール5に近い、いわゆる頭の良い子供が多い筈なのだが、 まったく逆なのであった。 高学歴の人でも、普通は頑張っても囲碁の実力はアマの高段者になれるのが限界である。 それが、低学歴(?)なのに、囲碁のタイトル保持者になったのだから、 どう考えても頭が非常に良いと考えるのが世間というものであろうが、 本人は、ずっと学歴コンプレックスを持ち続けていた。

大学には囲碁部というのがあり、依田プロも、東大囲碁部の合宿に参加したりして、 天下の秀才、エリート、要するに頭の良い人たちをまざまざと見たのであった。 オール1の人から見ても頭の悪そうなのが少なからずいたようだ。 東大入試を突破するのだからすごい人たちなんだ。 しかし、勉強ができることと、頭が良いこととは別ではないか、 無関係ではないかと気がついたのである。 そう気づいたら、学歴コンプレックスを持つのがバカバカしくなって、 ついには考えることもなくなって、コンプレックスが消えたそうである。

私も、東大の人々はいろいろ知っているが、まあ、いろいろな人がいるだけだなと思う。

「気力×体力×虚仮の一念=勝つ」

この方程式が成り立つそうだ。

終わりの方には、最近の中国、韓国の囲碁の強さについて延々と書いてあった。 向こうは、「虚仮の一念」の部分がずいぶん強いようだ。 そういう気迫がまるで違うようだ。 これは、囲碁に限ったことではなく、社会全体にも言えるような気がする。

本書は、子供たちに勉強勉強と押し付けるのは止めよう、というのが一番の目的のようだ。 子供にはいろいろな才能がある。勉強の才能が無くても、運動の才能があるとか、音楽の才能があるとか、 何かの才能があれば良いだけではないか。 無理やり勉強させても結果は何もついて来ない。いじめや自殺につながるだけであると締めくくってある。

2008年8月10日
囲碁