将棋ページ
書名 将棋とコンピュータ
シリーズ情報フロンティアシリーズ6
著者松原仁
発行日1994年7月20日
発行元共立出版株式会社
頁数四六変型版、168頁
定価1494円
ISBN4-320-02681-0

本書はコンピュータ将棋の概説書である。コンピュータ将棋の現状と、将来 像などが平易に書かれている。今までに行なわれた主な工夫とか、チェスなど 他の主要なゲームの若干の紹介もある。

………といのが通りいっぺんの紹介であるが、著者は 電子技術総合研究所 という偉い研究機関の研究員である。電総研には、この手の研究をやる推論研 究室なるものがあり、昔からゲームに明け暮れていた筈である。

電総研がまだ国会の裏にあり、そのころ仲間がオセロができるコンピュータ があるから遊びに行こうと言って誘われて行った研究室の室長が田村浩一郎氏 だ。WWWでちょっと探してみたら、今や電子技術総合研究所の所長ではない か。ウヘーッ、てなもんである。

本書を読むと、森田和郎、柿木義一、小谷善行、実近憲昭、などのコンピュー タ将棋で有名な人の名前が出てくる。もしかして、私の元同僚で、このあたり の人とコンピュータ将棋の商売で日夜付き合っている人がいるので出て来るか とヒヤヒヤしながら読んだが、出て来なかった。よかったー。

さらに、野崎昭弘、半田剣一(Muleの人)などコンピュータで有名な研究者 の名前もでてきてびっくりである。半田氏も将棋をやられるようだ。

さて、本書はコンピュータ将棋の入門書で、章の構成は次のようになってい る。

  1. 将棋の数学的性質
  2. ゲームのプログラムの仕組み
  3. プログラムを強くするための工夫
  4. 将棋以外のゲームのプログラム
  5. コンピュータ将棋
  6. 詰将棋とコンピュータ
  7. コンピュータ将棋の現状
  8. おわりに
いろいろ書いているが、一番著者が言いたかったことは「おわりに」ではな いかと思う。この部分は非常に重要と思われるので、どんなことが書いてある か紹介しよう。
欧米では、コンピュータチェスの研究は社会的にも広く認められており、世 界的に著名な人工知能研究者の多くが取り組んできた。
しかし、日本では、ゲームのプログラムを研究することは、周りから遊びご とをしているとみなされ、著者も白い目で見られた経験がしばしばある。これ が、日本はハードに強いが、ソフトに弱いことの原因ではないだろうか。
というようなことが8章の冒頭に書かれている。私も本当にそうだと思う。 人工知能的なゲームやパズルの研究を行なうこと無くしては、ソフトのレベル は上げられないのではないかと思っている。しかし、今でもそういうことが理 解できる人間は皆無に近い。したがって、日本は、やはりソフトで世界に遅れ を今後も取るであろう。

さらに、チェスの紹介の87〜88ページ部分には次のことが書かれている。

1970年からACMという米国のコンピュータの学会主催で毎年コンピュー タチェスの選手権が開かれるようになりました。(しかし日本には相変わらず 頭の堅い人々が多く、1980年に日本で開催されたコンピュータの国際会議 では、外国からコンピュータチェスの大会が提案されたにもかかわらず、日本 の主催者が拒否したと伝えられています)。

これは、実に世界に向けて、日本のコンピュータ関係者が馬鹿で頑固で石頭 で、日本のソフトウェアの将来は暗いことを宣言したようなものであった。そ して、実際にも、そのようになってしまった。

そう言えば、同じ著者が、最近またコンピュータ将棋の本を共立出版から出 した筈なので、そのうち入手して紹介しようと思う。

あまり将棋のことを書かなかった。御免、御免。


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