読書感想文コンピュータ編インターネット
書名暗号
作り方と解読の原理
シリーズ 講談社選書メチエ73
著者 辻井重男
発行日1996年4月10日
発売元講談社株式会社
サイズB5判、242頁
定価1500円
ISBN4-06-258073-X

本書は、頁数の約半分が、暗号全般の一般教養的な説明である。この本が、 一般の暗号の教養書と違うのは、後半の部分であるが、それは後で述べる。

まず、著者自身が暗号の専門家であり、現在のコンピュータによる暗号解読 の話とか、暗号の安全性および危険性、社会的問題までを前半で説明している。 著者の暗号に対する考えや、批判なども、ちょこちょこと挟まれていて、暗号 行政に意見しているように見受けられるところもあって、面白い。

デジタルキャッシュの説明や分析が正確なのが嬉しい。クレジット会社が介 在する取り引きなど、いくらインターネット上で行なっても決してデジタルキャッ シュではない。現金と同じ条件で使えて初めてデジタルキャッシュと言えるの であるが、この当たり前のことが、マスコミなどによってねじ曲げられて伝え られているのは困ったことである。

後半は「第5章 ポストモダン暗号 数理の魔術」だけからなっている。題 名通り、公開鍵暗号についての数学的説明が中心になる。といっても、本書は 縦書きであり、それほど詳しい訳ではないが、暗号の一般教養書としては詳し い方ではないかと思う。これ以上を求めるならば、暗号理論の本へと手を伸ば すしかないと思われる。

逆に言えば、後半は数学的素養のない人にはきついのではないかと思う。必 要なのは整数論程度であるが、整数論というのは易しそうにみえて、じつはと んでもなく難解なところも多く、未解決の問題も多い分野である。

いまや、暗号の基礎知識は、整数論と同じくらい情報科学、情報工学に携わ る人に不可欠になってしまった。これもインターネットのおかげである。

公開鍵暗号で全てが解決したようなことを書いている馬鹿な著者もいるが、 本書では、エピローグで、今後の課題などにも触れている。

第5章では、かなり数式も出てくる。が、本書は縦書きであり、数式を縦に 書かれると、さすがに読みにくい。このことは、著者自身も本の中で書かれて いるが、縦書きと横書きを組み合わせた本とかできないものであろうか。


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