読書感想文コンピュータ編インターネット
 
書名インターネットII
叢書岩波新書571
著者村井 純
発行日1995年7月30日 初版第1刷
発行元株式会社岩波書店
サイズ新書判、202頁、
定価640円(税別)
ISBNISBN 4-00-430571-3

本書は、前著『インターネット』発刊以降に起き たこと、つまり、1995年から1998年の約3年間のインターネットの変 化と、今後起こるであろうとことなどが書かれたものである。

基本的に本書は「岩波新書」であり、そのためその分野の第一線にいる人、 この場合は村井純氏が書いているのである。この3年間の大きな流れについて は、ほぼ本書に書かれているように動いてきたことはそうなんだが、村井純氏 の周辺がクローズアップされ過ぎていて、これがインターネットの全体像と思っ てしまわれると、ちと困る。インターネットの先端部分で何が行われていたか であって、決して一般的な常識ではないが、このような分野について知ってお くことも重要である。

第1章の教育の現場、「レポートが変わる」(23ページ)あたりはインター ネット的で面白い。レポートの提出をインターネット上で公開性にしてしまう と何が起きるかと言うことである。既提出者全員のレポートが見られるという ことは、当然ながら、他人のレポートをコピーしたりすると、教師だけではな く全員にばれてしまうという厳しい環境である。また、紙のレポートではない ので、他のレポートを見て、自分のレポートを公開後も変更できるということ がある。締め切りまでこれを繰り返すと、全員のレポートの質が自然と向上し てしまうというのは、当然とはいえ、教育として理想的な状況が発生したとの こと。

 
書名インターネット
叢書岩波新書416
著者村井 純
発行日1995年11月30日 初版第1刷
発行元株式会社岩波書店
サイズ新書判、206頁、
定価650円(税別)
ISBNISBN 4-00-430416-4

やっと、インターネットの家元というか、日本のインターネットを語るとき、 まず最初にあげなければならない人である村井先生が書かれた本である。まあ、 それだけで購入するに値する本であることは間違いない。

この本は、岩波新書ということもあって、いわゆる技術書ではない。かといっ て、インターネットの教養書というと、かなりニュアンスが違う。村井氏が中 心となって引っ張ってきた、『インターネットの思想』というものが本書の主 題であるようである。

この主題というのは、インターネットというコンピュータ通信技術を、技術 的とか、学術的とか、理論的とかというのではなく、とにかくできるだけ多く の人々に使ってもらいながら、次第に整えて行くという基本方針が、この本全 体で語られている。

コンピュータの知識にだけ詳しく、実務経験のない人が、技術的に正しい方 向以外には何でも反対ということをよく言う。また、たとえ動いていても、技 術的にみて正しくないことであれば、あれこれ批判することが多いが、そうい うのは若気のいたりなのであろう。私も若かった頃は、理論が好きであったが、 今では、「動けばいいじゃない」という風になってしまった。

この本は非常によく売れている(私の「コの業界のオキテ」より良く売れて いる)のであるが、一般の読者がこの本を読んで何を得ることが出来るのかは ちょっと見当がつかない。インターネットの思想的背景が理解できれば素晴ら しいが、それは既にインターネットに馴染んでいる方でなければこの本を読ん だだけでは難しい。

そういう思想的な本でありますが、インターネット経験者には、この本には 別の意味があると思う。それは、いままでの日本のインターネットの歴史が書 いてあることだ。どちらかというと、『懐かしい』と感じるであろう。この、 懐かしさを感じた個所をあげてみよう。

145〜146ページに、インターネットと日本語の問題の記述がある。

「みんなで使う」が重要
少し話がそれましたが、日本語化に際しては、もう一つ、フォント(字体) を用意しなければならないという大きな問題がありました。最初は、すでにフォ ントをつくり上げていた印刷会社や写植メーカーから、UNIX用に寄贈して もらおうと考えたのですが、それはうまくいきませんでした。結局、ある学生 が一人で6000字以上を作ったのです。

という話が出てきます。これは、かの有名な、k14 という名のフォントのこ とだと思う。別名、「たちばなフォント」とも呼ばれていた。このフォントは、 個人で作ったにしては、実に漢字というものに忠実に作ってある。サイズが1 4ドットであるにも関わらず、極めて美しい。作成者のこだわりがフォントか ら溢れている。それから、「学生」ということになっているが、本当は学生で はなかった筈。会社員であったが、雑誌などでは殆んど大学の名前で登場して いたので「学生」ということになっているのだろう。

156ページに岩波書店の話が出て来る。つまり、初期の頃、日本のインター ネットの拠点が岩波書店にあった話である。これは、地下鉄の半蔵門線が延長 され、岩波書店のある地下鉄の神保町駅を通るようになった直後のころの話で ある。岩波書店の地下の一室にコンピュータを設置して、あちこちの会社や大 学へここから接続していたのである。今、あの部屋はどうなったのであろうか。 確か、本来はショールームにするとか岩波書店の方が言っていた部屋である。 これも懐かしい話だ。

最後の章に、「インターネットの重要課題」が書いてある。その中には、日 本の世界の常識ではとても考えられない様な高い電話料金、とくにデジタル回 線の高さは滅茶苦茶であると書いている。この記述により、世間一般の方々が、 日本の回線の価格が不当なことを少しでも理解できるようになるならば、大変 価値の有ることである。

インターネットはセキュリティがないという世間の妄想についても書いてあ る。もちろん、「公開カギ暗号」によって克服できることを書いている。本書 のこの部分の説明はあまりに簡略なので、「公開カギ暗号」について、もっと 詳しく知りたければ、ブルーバックス(B1055)の『情報セキュリティの科学』 太田和夫、黒澤馨、渡部治 共著を読まれると良いだろう。

1995年12月14日


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