読書感想文コンピュータ編日本語情報処理
書名電脳社会の日本語
シリーズ文春新書 094
著者加藤弘一
発行日平成12年3月20日初版
発行元株式会社文藝春秋
頁数新書判、246頁
定価710円(本体)
ISBN4-16-660094-X

コンピュータ上での漢字の取扱はとにかく大変である。 とくに、漢字は何文字有るかも分からないし、どの字がよく使われているかを調べる だけでも大事業である。また、難しい漢字だからといって、一般に通用している方の 字で書くと、人名、社名のような場合は激怒されたり、訂正を求められたりと大変なのである。 それなのに、知らない間に自分の苗字が簡略な表現にされたり、点が消えたりついたりと 面倒なことこの上ない。そして、印鑑証明のときなど、点の有無で書き直しなど発生する のである。点の有無くらいで、自分の存在が否定される世界でもある。

コンピュータの中でも難しい分野はいろいろあるが、 とにかく漢字の世界は混沌としており、これほどコンピュータで扱い難い分野もない。 それも技術的な問題と言うより、過去の膨大な資料とか、いままでに普及してしまった コンピュータ上の漢字コード、とくにシフトJISと呼ばれているものの影響は大きい。

10年くらい前から、やっと漢字を楽に扱えるレベルにパソコンの能力はなったのであるが、 そうなると漢字は有るだけ載せようという風になるのは当然のなりゆきである。が、さらに 問題を難しくしているのは、漢字は日本だけでなく、東アジアの国々で利用されている文字である。 しかし、日本、中国、台湾、韓国でそれぞれ微妙に、また大幅に扱いが異なるのである。 そうなると、自分の国での扱いをそのまま国際規格にしようと思うのは当然であり、 国際舞台での駆け引きがある。とにかく、技術以外の面倒な問題がおもいっきり絡むのが 日本語処理、漢字処理問題なのである。

まあ、こういうことに関して、できるだけ多くの人々にインタビューなどをして情報収集 した上で書かれた本である。幸いコンピュータ上での日本語情報処理は歴史がそれほどないため、 多くの人はまだ生存どころか各分野で活躍中であり、より正確な情報がとれるのである。

わたしもかなり前になるが、この分野の仕事を若干したことがあるが、面倒な仕事であった。 面倒なだけでなく、いろいろな思惑がおもいっきり絡む分野である。 そして、日本文化の中枢部分でもあるが、日本政府の理解はほぼゼロであった。 当時努力しておけば混乱はもうすこし避けられたと思われる問題もあろうが、 今となってはどうしようもない。世界に対してちゃんと発言していないと、 他国の影響で、日頃使っている漢字まで自由に使えなくなる恐れがあったりするのである。

本書は、日本語処理、とくに漢字を中心に文字コードの話を書いている本である。 技術書ではないので、技術的説明は最小限にとどめている。漢字コードの話をするには、 相当の図を用いて説明しないと分かりにくいと思うが、新書という正確上、図はかなり少なめだし、 例も多くない。

逆に、漢字コードをめぐっての各国の考え方、国際標準の変遷などの解説はかなり詳しい。 でも、なんだかんだといっても、新書であり、入門書である。本書で物足りない人、 もっと技術的なことなど調べたい人は、 著者のホームページを起点にして、 さらに日本語、漢字のコンピュータ上での扱いについて調べると良いだろう。

まあ、個人的な感想としては、「昔を思いだすなぁ」というところである。

2000年4月26日

読書感想文コンピュータ編日本語情報処理