読書感想文コンピュータ編パソコン
書名CPUの創りかた
著者渡波郁
発行日2003年9月30日
発行元株式会社毎日コミュニケーションズ
頁数B5判変型
定価2800円(本体)
ISBN4-8399-0986-5

昔の秋葉原は電気部品を色々売っていて、たとえば自作コンピュータを作り たい人はこそこそと行ったものである。 今のように、パーツを購入してきて、スロットに差すだけの軟弱なのではなく、 ちゃんと抵抗、コンデンサや発光ダイオードとかを買ってきて、半田づけしたものである。

しかし、今の秋葉原は、なんといってもコミケの街である。 だから、こっそりパソコンのパーツを入手するのも、秋葉原でなく新宿になったりすることがある。 それでも勇気を出して秋葉原に行くと、どんどんコミケが主流になっていて、 ちょっと肩身の狭い思いをしていた。

そう思っていたところで出版されたのが本書である。 たった13個の、これでもかというくらい低性能な基本的なICを組合せて、 ちゃんとした(?)CPUの創りかたを書いた本である。 肝心なのは、本書は、いわゆる「作りかた」ではなく、 どうやったらCPUを創造(正しくは妄想)できるかが、本全体で述べられている優れものである。

本書は、あくまでもコミケスタイル(?)であり、表紙はもろにそうなので、 電車の中などで読んでいると、その筋の本を読んでいると確実に誤解されるが、 テクニカルには非常にまともな本である。 堅苦しい話は全然出てこない(一部やむなく入っているが)感じであるが、 「ものづくり」の本質をちゃんと書いている。

大多数の本が、或は技術教育が、それが何に役立つかは教えずに、頭ごなしに 知識を与えようとするが、本書はまったく逆である。妄想があって、それを実現するために どうしようという感じで進むのが中心であり、妄想を現実にするために説明が存在する ような本であり、究極の教育哲学に従っているようだ。

中身について若干説明しておくと、4ビットCPUであって、メモりは16パイト用意されている。 しかし、RAMではなくROMで、手で書き込むタイプである。早い話が、DIPスイッチをROMとして 使うのである。まるで反則技みたいなものだが、勉強には最適かも知れない。

それでも、ちゃんとIOポートもあって、発光ダイオードをつけて、プログラムでチカチカ させることも可能である。本CPUは、本の通りに作れば、クロックが1秒というとても 人間の感覚に近い速度で動作する。これも、なかなかに渋いところである。

という理由で、本書を読めば、CPUをどうやれば設計できるかが分るようになっている。 なお、本書の4ビットCPUと、Pentiumなどの一般的なCPUの間には、理解不能な程の 壁がある。その壁を乗り越えようとするのは無謀だが、それは本人次第なので関知しない。

この程度のCPUでしかないが、もちろん電子回路には違いなく、実際に作れば 様々な問題が発生するので、その理由やら対策がしっかり説明されている。 このあたりは、本書のとても優れた点である。

今では、プログラマといっても、コンピュータの中身を覗く者は少なくなり、 半田ごての使いかたはもちろん、アセンブラも知らない人が増植してしまったが、 やはりCPUをしっかり理解した上でプログラムも組んだらどうかと思う。

中学校の科学クラブあたりで、このCPUがどんどん創られるようだと、 日本の製造業はまだ明いかも知れない。ご期待したいな。

2003年12月24日


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