読書感想文コンピュータ編その他(トラブル本)
書名アジアのIT革命
著者三和総合研究所調査部
発行日2001年5月8日
発行元東洋経済新報社
頁数A5判、214頁
定価2200円(本体)
ISBN4-492-44275-8

このところ、アジア各国のIT事情のようなことを読むようにしているのだが、 この本は、そういう意味では知りたい部分をある程度まとめてくれた本であった。

アジアのITといっても、全般的に扱っているのではなく、IC、つまりインドと中国 を中心に調査結果がまとめられている。したがって、扱っているのが、 インド、中国、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、それとシリコンバレーであり、 日本の例として岐阜県がちょっとだけ扱われている。

韓国が扱われていないのはちょっと不思議だが、この調査は、あくまでインドと中国、 そして中国が圧倒的な影響力をもっている国々を扱っているようである。

おおざっぱに解説しておくと、インドは、IT省(MIT)があり、 ソフトウェアはインドの最大輸出産業であり、インドの飢餓はソフト開発で対処するようである。 実際の情報は、 NASSCOM (National Association of Software and Service Companies) あたりで各種統計も見られるので、参考にするとよいだろう。 インドは、今での電気さえまともに使えないところであるが、ビルの上にパラボラアンテナを取り付け、 各開発センターが直接シリコンバレーに衛星経由で直結状態になっているとのこと。

中国は、北京を中心とする北と、香港および珠江デルタの南部ではまったく情勢は違う。 南はコンピュータに限らず、家電製品などのハードが中心で、産業基盤の弱い、あるいは重厚長大型の 北部ではハードは無理なのでソフトウェア開発に走ったようである。とくに北京は、政治的中心地でありながら、 経済は南になっているのをなんとか打開したいというのもあり、また中国の優秀な大学が集まっていることもあり、 ソフトウェアに傾斜していったようである。北京といえば、中関村のようである。

あと、中国と台湾の微妙なというか、絶妙な関係も書かれている。

シリコンバレーについては、とくに現在、インド人、中国人技術者の割合がどんどん増加していること、 すでにカリフォルニアでは、インド人、中国人がマイノリティではなく、白人がマイノリティになりそうな 状況になっていることなども書かれている。彼らは単に技術者として働いているだけではなく、 既に有名な企業を興したものも少なくない。たとえば、サンマイクロ(インド人)、ヤフー(中国人)など多数 あるようである。

シンガポールなど、ブロードバンド以外など既に消えてなくなっているような状況らしい。

マレーシアも、なんとか追い付こうとして色々やっているようだ。 マレーシアでは、マレー人優遇措置が長い間行われてきたが、中国人やインド人が経済を握っていて、 結局かれらががんばってくれないとIT参入ができないらしい。

ベトナムは、政府の思惑どおりにハノイが発展することはなく、やはり南のホーチミン市が先行しているらしい。 しかし、ベトナムは、現在非常に元気がよいようであるが、まだIT革命までは時間がかかりそうな状況である。

岐阜については、岐阜県のページとか、 ソフトピアジャパン を参照してほしい。

で、結論だが、世界は、インドと中国とアメリカのトライアングルでIT革命が進んで行くということらしい。 ここで、アメリカというのに、ユダヤが入っていれば、それは十分になっとくできる。 日本については、かなり悲観的なというか、冷静な評価をしていると思う。 日本のIT革命の弱点の1つとして日本の教育をあげている。 日本は世界に類をみない保守的な国で、社会制度、会社などの対応が非常に遅れるだろうことは 予想通りであるが、教育の問題はそれいじょうに厳しい状態にあるかなぁ、やっぱり。

日本人は、アジアに目を向けず、ひたすら欧米に目が向いている気がする。 そろそろアジアに目を向ける必要があるのではないかな。もう手遅れかも知れないが。

とにかく、お薦め本である。

なお、アジアのインターネットについて詳しい情報の載っているURLなど知らせてくれると嬉しい。

2001年7月5日


読書感想文コンピュータ編その他(トラブル本)