読書感想文コンピュータ編その他(トラブル本)

電脳曼陀羅

著 者:中村正三郎
発売元:株式会社 ビレッジセンター出版局
発行日:1995年 1月30日 初版第1刷
定 価:1200円
サイズ:B6版 267ページ
ISBN 4-938704-89-7

本書は、日本のコンピュータ通信、パソコン通信の役割を世間に知らしめた 極めて歴史的価値のある本である。それゆえ、是非読まれることを推薦するの であります。その理由は、少々長くなるのであるが、超手短に言えば、

コンピュータ通信を利用することにより、企業の横暴を食い止めることが できる

ことを知らしめたことである。

『電脳曼陀羅』というのは、技術評論社というコンピュータ関係の出版社が 出している月刊誌『ざべ』の連載記事であった。この記事は、『ざべ』の連載 の中でもとりわけ面白い人気記事であったので、知っている人も多いはず。

この連載は、パソコン業界の裏というか、手の内をよく知りつくしている筆 者である中村正三郎氏が、おもしろおかしく、パロディ風にアレンジして書い たものである。もちろん、内容は過激であり、業界の内部を知るにはとっても 参考になるのであった。

で、1993年の9月号、10月号の『電脳曼陀羅』の内容に対して、日本 法人マイクロソフトがいちゃもんをつけ、マイクロソフト社から技術評論社へ の情報提供を停止し、中村正三郎の記事を載せた技術評論社をパソコン業界か ら追放すべく、マイクロソフト社の成毛社長が無茶をしたのである。

技術評論社は、情報封鎖に対したじろいだのであるが、中村正三郎氏は連載 中止の真相についてパソコンネットを通じて発表し、マイクロソフト社批判が 全国のパソコンネットに広がり、新聞などでも報道されてしまって、ついには マイクロソフト社、とりわけ成毛社長が困ってしまうのである。

本来はパロディであったのであるが、マイクロソフトが中村正三郎氏を徹底 的に憤慨させてしまったため、本書の後半にある『ミカンせいじんのしんりゃ く』は、成毛社長(黒い魔ソフト社長、丸毛毛「まるもうけ」)を明らかに滅 茶苦茶にしてしまうために書かれているのである。これは、もはや成毛社長に は社会的に中村正三郎氏を訴えることができなくなったため、中村正三郎氏が ガンガン書いたのである。

以上が、この本の骨子であると私は考えているが、読み違いがあるかもしれ ない。

で、一番重要なことは、インターネットとか、パソコン通信を使うと、

個人が企業に対抗できる

ということを証明したことであろう。コンピュータ通信、特にパソコン通信、 さらにはインターネットが存在する前までは、個人が大衆に向けて情報発信す る術がなかったのであるが、今やそれが可能になった。これにより、はじめて 本当の意味で

民主主義が確立する

のである。

だから、皆さん、ガンガン本当のことを書こう!!そして、もし圧力が掛けら れたら、そのこともじゃんじゃん書こう!!これにより、やっと日本の民主化が、 日本の夜明けが来るのだ。

で最後に、この本の別の問題点をあげておこう。この本、コンピュータにつ いてかなり詳しい人でないと、書いている内容を理解出来ないことであろう。 「ざべ」という雑誌は、もともとそういう人種を対象とした雑誌であるから、 まあそれでいいのであるが、一般人が本書を読み、内容を理解することは至難 であろう。もし、内容を理解できるなら、すでにコンピュータの世界に全身は まってしまっている。


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