読書感想文コンピュータ編その他(トラブル本)

ソフトウェアの法則

コンピュータの利用技術とは

中公新書1270
著 者:木下恂(きのした・しゅん)
発売元:株式会社 中央公論社
発行日:1995年10月25日 初版第1刷
定 価:720円
サイズ:新書版 230ページ
ISBN 4-12-101270-4

本書は、かの有名な『マーフィーの法則』にかなり似たところもある本であ ります。

まず、著者について、若干の紹介をしておこうと思います。木下恂著という 本を見たことのある方は少なくはないと思うのですがどうでしょうか。C言語 などの本を何冊か出していられます。著者は東芝でコンパイラ開発などを長年 してこられた、知る人ぞ知る技術者です。まあ、読むにはそんな予備知識はな いほうが良いかもしれません。

この本は、半分は、著者自身の、身の上話というか、ソフトウェア開発とは 到底関係がないと思われるエッセイ風の話が最初にあり、そのうちソフトウェ ア開発関係の話が出てくるような構成になっています。

まあ、私にとっては、ソフトウェア開発に関することと、それらから導かれ る法則というのは、まあ、ソフトウェア開発を長年やってきた者にとっては普 遍的なものが多かったので、さほど目新しいものではありません。

エッセイ部分から滲み出ている、著者の人物像が、なんというか、非常に真 面目な感じがして、良識のある大人の雰囲気にあふれています。とても私には、 このような落ち着きのある本は書けそうにありません。

本書を読んで、1つ賢くなれたこと。それは、両手でキーボードを打ち、マ ウスも操作するのは大変だと思う人は少数派である、ということでした。つま り、ウィンドウズなどが流行し、マウスを操作しなければならなくなってきて、 結構不自由を感じているのは、キーボードを自由に打つことが出来る『少数派』 だけ、ということです。

ほとんどの人は、もともと一本指、または左右の一本指×2の2本指でキー ボードを打っていたのであるから、ホームポジションも何も有ったものではな いので、マウスを操作しなければならなくなったといっても、以前と大差はな いのです。キーボードを打つ早さは、マウスに片手を取られても、取られなく ても同じというのが、一般人、ごくごく普通の人です。

という話があって、納得してしまいました。まあ、私は、中学生のころから 手動タイプライタなるものを打つ練習をしていたので、ブラインドタッチが常 識と思っていたのですが、これが世間との相互理解できない大きな要因であっ たのでしょう。これからは気をつけなければ。

本書の34ページに、

PL/I(ピーエルワン)についてはあらかじめ1から100までのすべて を商標登録してしまった。しかし、周知の通りこの言語は2以上に発展するこ とは決してなかったのである。

とあるのですが、ちょっと疑問が残ってしまったのです。それというのは、 昔、マイコンソフトの開発用にPL/Iに似た、あるいは似せた、PL/Mな る言語があったことを知っている人はいるでしょう。さらに、私は、この著者 のいた某社で、PL/40なんて言語でプログラムを組んだ覚えがあります。 この言語は、某社のTOSBAC-40Dとかいう、磁気コアのついたコンピュータの上 で動きました。もちろん、TOSBAC-4300とかいったと思うのですが、そういう 名の大型コンピュータでのクロスコンパイルも可能であったとおぼろげながら 覚えています。この言語では、レジスタも直接指定でき、CPUのフラグも直 接条件判定に利用できて、「あら便利!」という感じでありました。

……と、うっすらと覚えているのですが、もしかしたら、私の勘違いかも知 れないので、どなたか教えて下されば(^_^)です。某社の方、宜しくお願いし ます。


本日(1996年3月15日)、本書の著者から丁寧なメールを頂きました。 最後の、私のあやふやな部分を教えて下さいました。

本書34ページの元になったのは、 PROGRAMMING SYSTEM AND LANGUAGES, Edited by Saul Rosen, 1967, McGrow-Hill の記述に基づいたものだそうですが、この元の情報も「伝聞」であろう、と いうことでした。


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