洋書独書記録

村上春樹


書名 Norwegian Wood
『ノルウェイの森』邦題
著者村上春樹
訳者Jay Rubin
初出1987 (Japanese), 2000(英訳)
発行2003 by Vintage
頁数386ページ(本文)
定価£ 7.99
ISBN978-0-099-44882-2

日本人作家の英訳を読むのは、これが初めてである。 石黒一雄と村上春樹の英語の本が海外でかなり読まれているようなので、 どちらかを読んでみようと考えた。 ページ数はとんでもない長編は困るが、このところ気にならなくなった。 やさしい英語の本というのが選択の第一条件ということで、この本になったのである、 と言いたいところだが、実際には気分で選んだ。 もちろん、書き出しの1ページくらいは立読みしたが。

実際、英語はとてもシンプルで、知らない単語があっても、 無視して読んでも全然困らなかった。 日本語の方も読んでいなかったのだが、 主に東京での学生時代の話であり、四谷、新宿、吉祥寺、大塚など、 全部私が良く、あるいはそれなりに知っている場所ばかりだったことも 読みやすくしたのかも知れない。

表現は優しいのだが、内容はメンタルなことを扱っている。 37歳の主人公Watanabeが、東京に上京して、大学生活を送っていた20歳ころの 思い出が語られる。

Watanabeの友人、恋人、取り巻きたちは、みんなどこか変である。 精神病になり、自殺してしまう者がいっぱいだ。 また、行方不明になるものも多い。 そういうどうしようもない侘しさ、失意、喪失感が流れ続けている本である。

そういう本であるが、あまり重苦しい感じはしない。 分りやすい、簡単明瞭な、さらさら感とでもいえば良いような英文なのだ。

400ページ弱と結構長いのであるが、重くなく、それでいて色々な 事が次々と発生していくので、あきることなく一気に読めるタイプだ。

とても分りやすい英語なのだが、 最後まで読んで、最後の一文で、「ん?」と思ってしまった。 私はちゃんと英語が読めているんだろうか、と不安になったのである。 最後のところだけ書いておこう。

All that flashed into my eyes were the countless shapes of people walking by to nowhere. Again and again I called out for Midori from the dead center of this place that was no place.

で、どこにいるんだろう。 Midoriに電話する前に、上野駅で、 Reikoを見送ったところで、 その直後に電話をしたなら上野駅ということになるが、何も説明がない。 というより、deadという言葉で、主人公 Watanabeはすでに死んでいて、 Midoriに電話しているんだろうか、と思ってしまった。

さて、よく分からないときには原書を見るという手がある。 で、ちょっと最後のパラグラフだけ立ち読みをしてきた。 日本語は、もっと淡々と書かれているのであった。 主人公が死んでいると思わせるような表現はないように思われた。

ネットで調べると、この最後の解釈について英語で色々書かれていたが、 興味のある人は自分で調べられたし。

2008年6月22日


我輩は猫である


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