洋書独書記録

Malcolm Gladwell


書名 The Tipping Point
著者Malcolm Gladwell
発行2000, Litte,Brown and Company, Hachette Book Group USA
頁数259ページ(本文)
定価$7.99US
ISBN0-316-67907-0

本書は、書店で "blink" と並べられて置かれていることが多いようだ。 どちらもマーケッティングの本で、ちょっとだけ視点が違うけれど、かなり近い。 本書は、流行について、あれこれ紹介している。 流行にも2種類が存在する。何かが流行るのと、流行っているのを止めるという、正と負の流行である。

アメリカの大都市、とりわけニューヨークは犯罪が多く、 とくに地下鉄は危なくて誰も乗らない状態であった。 しかし、これが、1980代年から1990年代にかけて、犯罪が激減していったのである。 要するに、犯罪を犯さない(犯せない?)ということが流行したのである。

犯罪減少のためには、どんどん取り締まりを強化することを考える訳だが、 実際に行ったのはその正反対のことである。 まず、地下鉄の落書きを消すことにした。そんなことをしても、地下鉄犯罪が減るはずがないと 反対するものが多かったが、落書きが消えるとともに犯罪も減少し、客が戻ってきた。

さらに、無賃乗車など、軽い犯罪をしっかり取り締まったのである。 軽い犯罪だからといって犯してはいけないというのやったのである。 ブタ箱に入れるのではなくて、手錠をして、改札のところに立たせて、皆に見えるようにしたのである。 やり方はともかく、とても軽い犯罪をしっかり取り締まることで、 地下鉄の犯罪はどんどん減って、安全な地下鉄になったという。

自殺の流行についての分析はいろいろされていた。 ミクロネシアでは、そもそも自殺というものがなかったのだが、 有力者の息子が自殺したら、次々と自殺するものが出てきて、 ものすごい高い自殺率になってしまったという。

自殺と、新聞の自殺記事との関連についての分析があった。 もちろん、おおいに関連があるという。 さらに、自動車事故の一部は、自殺ではないかとも書かれていた。 自動車事故統計と、新聞の自殺記事との関連がしっかりあるという。 自動車事故を装って自殺する者がいるということだ。 しかし、自動車での自殺は、まわりを巻き込む可能性が高いので、困ったものである。

喫煙、禁煙についての分析があった。 単に流行という分析にとどまらず、そもそもニコチンに耐えられる遺伝子をもっているかどうかも 重要な要素になっているという。 ニコチンに耐えられない人は、決して喫煙者にはなれない。 喫煙している者は、一応ニコチンに耐える遺伝子を持っているという。

全世界で、なんとか未成年者の喫煙をやめさせようとしているが、さっぱり成功していないという。 実際、日本でも未成年の喫煙はかなりあるのではないかと思う。 規制を厳重にすれば、喫煙はなくなるというのは誤りであるという。 若いということは、何かやってはいけないということに興味を持ち、試してみることだという。 確かにそうだろう。そうでなければ、社会は進歩しないだろう。

禁煙運動を強化すると、えてして喫煙率が上がったりするという。 喫煙者と非喫煙者の平均寿命にはもちろんかなり差がある(本書では確か6年だった)。 喫煙者が、喫煙し続けることによって、どれだけ寿命が短くなると思っているかだが、 実は実際よりもより短くなると思っているのである。 喫煙の危険性を十分に認識した上で喫煙しているので、 いくら命が縮まると医者が本人に言っても、意味は無いという。 意味があるのは、大切な人から、「長生きするために禁煙して」と懇願されることだけだろう。

その他にもいろいろ書かれていたが、詳しくは読んで欲しい。 とにかく、様々な例が上げられている。

本書の最後に、書かれていた言葉をあげておく。

Look at the world around you. It may seem like an immovable, implacable place. It is not. With the slightest push --- in just the right place --- it can be tipped.

成功するためには、むやみやたらに頑張るだけではダメ。 ツボをちゃんと押せば、世界は動き出す!

2008年11月3日

書名 blink
著者Malcolm Gladwell
発行2005, Back Bay Books, Hachette Book Group USA
頁数273ページ(本文)
定価$7.99US
ISBN0-316-05790-8

題名のとおりで、一瞬、非常に短い時間でとても判断することなど不可能と思える間に、 人間は実にいろいろな判断を行っている。 そして、その判断も人により非常にレベル差があることについて、 様々な例を出しながら紹介している本であった。

カリフォルニアの美術館で、ギリシャ彫刻を買いとるのに、 専門家が様々な科学的分析、検討を1年以上に渡って慎重に行った。 しかし、実は偽物を掴まされたのであった。 しかし、毎日ギリシャ彫刻の相手をしている人、 つまりギリシャで日々修理とかの携わっている人がみたら、 見ただけで一瞬で偽物であることを感じ取ってしまった。

夫婦の話ているところを、ほんの短時間だけ見て、 将来離婚するかどうかを言い当てるというのがあった。 これも、専門家(?)になると、ほとんど確実に言い当てることができる。 その判断基準になるものについて、ちゃんと勉強して、 訓練をすれば、普通の人でも言い当てられるようになるんだと。

アンケート調査というものが、いかにアテにならないかを、いくつもの例を挙げて説明していた。 一番興味深かったのは、コカコーラとペプシコーラの話であった。 ちょっと飲んでもらって、どちらが良いか、製品名を明かさずに指摘してもらった場合と、 実際によく売れるものとは正反対になってしまう。 こういう味見のテストでは、ちょっと飲むだけで、こういう場合には 味のきつい方が好まれることが多い。 しかし、人々は、ちょっと飲む、味見をするために買うのではなく、 1本飲み干すために買うのであって、ちゃんと飲み干せる方が売れるのである。 味見のテストでも、飲み干しテストをやらないと意味が無いのである。 といっても、現実にはそいういうテストは難しい。

コカコーラとペプシコーラの比較テストで、トライアングルテストというのがあった。 コップを3つ用意する。一方のコーラを2つのコップに注ぎ、もう一方のコーラを残り1つのコップに注ぐ。 この状態で、どのコップがどちらのコーラかを全部当ててもらう。 もし、2つをちゃんと区別できるのなら、3つとも言い当てられるはずであるが、 この2種類のコーラでは、ほとんどの人が当てることができなかった。 コーラの区別には自信があるという人々も全滅だったようである。

人間は、無意識のうちに、瞬間的に判断し、行動している。 その重要性を認識するにはたくさんの例があって、参考になる。 もっと例を出したい所だが、面倒なので、このあたりで終わりにする。

英語については、やはり心理学的な内容が多いこともあり、それなりに難しい。 といっても、英語の構文が難しいというのではないので、じっくり読めば大丈夫ではないだろうか。 内容的に興味さえもてれば、困難と思うほどではない。 ペーパーバックの普通の厚さの本であり、 さまざまな具体的な例を出して説明しているので、飽きることは少ないだろう。

かなりお薦め本である。 "THE TIPPING POINT"も同じ著者の作品である。

2008年8月11日


洋書独書記録