洋書独書記録

Paul J. Nahin


書名 The Story of √-1
著者Paul J. Nahin
発行1998 Princeton University Press
頁数269ページ(本文226ページ)
定価unknown
ISBN0-691-12798-0

本書は、題名通り、√-1、つまり虚数の本である。 虚数が数の体系に組入れらて、複素数という世界が広がり、 とても豊かになったことを、入門書的に書いたものである。

著者は、数学者ではなく、電気工学の教授である。 そのためもあって、純粋に数学的にだけ説明しているのではなく、 たとえば4次元の世界(x,y,zは実数軸だが、t(時間)は虚数軸)とか、 電気での使われ方なども出てくる。

実数上での解析の研究はニュートン以降どんどん進んだ訳だが、 なかなか虚数、複素数のという考え方に踏み込めなかった長い苦悶、葛藤の時代がある。

複素数を最初に考えた、とくに複素平面を考えたのは Caspar Wesselであるのだが、 あまりにもEulerが有名で、何でもEulerが考え出したと思ってはいけないようだ。

実数の世界だけでいろいろやろうとすると大変だが、 複素数を知った上で実数の公式を求めると非常に簡単に求まることが多々ある。 その代表的なのが3角関数の公式である。 高等学校で無理矢理な証明を教えられ、 長ったらしい公式を憶えたものだが、 あんなもの全部捨てて(必要になれば公式集でも見れば済む)、 複素数をもっと早くきちんと教えるべきである。

日本のポピュラーサイエンス、入門書の類いは、なぜか複素数を導入してしまえば 簡単に済む話を、何とか複素数には触れないで解説しようとして、 よけい話を難しく、まるでパズルにしていないだろうか。 訳の分らない鶴亀算のテクニックを磨くより、方程式を教えたほうが賢明だ。 複素数の性質を理解してしまえば、その一部を使うだけで、 実数に関する沢山の公式が自然と導かれる。 何事も、一段上の概念に基いて眺めると、随分簡単になるものなのに、 そういう立場にたったポピュラーサイエンスの本は何だか少ないような気がする。

級数展開がでてきたり、πの計算方法にも話が及ぶ。 ii は何かとか、Γ関数が出てくる。 Reimannも出て来て、ζ関数が出て来て素数分布が出て来て、 どんどん盛り沢山になっていくのだが、 こっちの頭は次第に朦朧としていく。

そして最後の章は、複素関数論でトドメを刺される。 その昔、どこかで勉強したような公式も多数紹介されていた。 ただし、きちんとした証明まですると長くなるので、本書では省略されていた。 このあたりになると、大活躍するのはCauchyになる。 複素平面上での積分で、経路がどうのこうの、正則だの色々な話が出て来て、 読みこなせそうになったところで本書は終った。やれやれ。

さて、すこしだけ話題を提供しておこう。

cos(θ) = 2 の解を求む。

ついに頭がボケているのか、|cos(θ)| ≤ 1 を知らないのかと思われてしまいそうなので、 この本のこと、複素数の話は、ボロが出る前に終えることにしよう。

英語は、まあ平易であった。英語がびっしり詰ったページはなかなか読み進めないが、 数式や図があると、急にペースがあがるのであった。 数式も、本当は自分で導きながら読むのが正しい読みかたと思うが、 そこまでの根気はもうない。

2007年7月29日
洋書独書記録