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第10章 最長不倒関数

UNIXへの招待


今年の正月、東京へ戻ってきたら、「Cプログラム診断室」を読んでいると いう hiroko という昔の知合いから自宅に郵政省メール(電子メールと区別す るとき、特にこのように書きます。どうして郵政省は、ファックス郵便を電子 メールなどと呼ぶのか、まったくコンピュータ通信を冒涜している。)が届い ていました。

薬の研究員ですが、近頃は計測も自動化され、コンピュータを使いこなさな いとどうにもならないらしい。会社では、「タコ」なMS-DOSを使っているが、 制限がきついので、UNIXに触ってみたいとのことでした。

それは簡単、うちの会社までノコノコやって来て、Xウィンド上で遊び回れ ば十分ではということで呼んだら、好奇心だけは旺盛なhirokoさんのことです から、何とかなるでしょう。

研修は、まずはXウィンドの操作、次にエディタを覚えなければということ でNEmacsを覚えてもらいました。次はUNIXをやる以上電子メール(E-mail)を使 いこなして「メール友達」を作らなくてはと、メールの読み書きの方法を教え ました。この段階ではかな漢字変換の方法を教えていなかったので、送られて くるメールは漢字でも、出す方は英文でした。

では、つぎは漢字の使い方ということで、「たまご」を教えました。たまご とは、「沢山待たせて御免なさい」の略で、なかなか世に出せなかったため、 開発者が恐縮してつけた名前です。たまご(世間ではeggと呼ぶ)は、かな漢 字変換サーバとしてWnnを使っていますが、この変換はどのパソコンよりも 「馬鹿だ」と言われてしまいました。私は、個人的に辞書を再構成して使って いるけれども、元の辞書が悪いのでパソコンやワープロに比較するとまだまだ です。

ついに、メールも日本語で書けるようになりました。うちの社内だけに出す のではメールの価値が実感できないので、A社に協力してもらってhirokoさん のメールに返事してくれるようにたのんだら、あっという間にUNIXの世界の生 活環境に慣れて、遊びのメールが大量に飛び回るようになってしまいました。 渋谷のUNIX飲屋の顔なじみにまでなったのだから、もうUNIX界でも生きていけ るでしょう。

次の研修の目的は、C言語を覚えることだって。プログラムなんか、自分で 作らなくても、メールで内容を詳しく説明したら、次の日にはプログラムがメー ルでやってくるのだから、プログラム言語を覚える必要は無いと思うのだけれ ど、まだ本人と会社の方は言語にこだわっているみたいです。sにはビール、a にはぬいぐるみ、hにはアルコールなら何でも可、mには一緒にドライブかな、 kには食糧、vにはCDかな。金よりこういうものを貢ぐ方が、日本の一流プログ ラマ達がホイホイとプログラムを作ってくれることを覚えておくことが一番重 要だとみんなで飲み屋で教えたのに、教え方がまだ不十分だったみたいです。

PERLという言語(参考文献[1])を知っていますか。この本の「まえがき」 に、

We will encourage you to develop the three virtues of a programmer: laziness, impatience, and hubris.
という文があります。hirokoさんのお気に入りの文ですが、 その通りです。

この1年くらい、私は全然プログラムを組んでいません。汚い関数を見つけ ては、「こんな関数が存在するから動かないんだ」という感じで、関数を(と きにはファイル単位で)どんどん廃棄処分するのが仕事の中心になっています。 毎日のプログラムの生産量はマイナスで表現します。間違ってプラスになる日 もないわけではありませんが、平均すると毎月何千行、何万行削除という感じ です。

みんながもっとサボって、少ない行数で横着に書いてくれると、人の書いた プログラムを捨てるという傲慢きわまりない作業をしなくてすむのですが、世 のプログラマ達は体力にものをいわせてコーディングするようです。本当に困っ たものです。

プログラムを組めることより、どうやったらプログラムが完成するかを追求 しましょう。プログラムを書かずに目的を達成すれば最高でしょう。


追記(1996年4月15日)

じつは、hiroko さん、世界最大規模の製薬会社の日本研究所に勤めていま したが、あっというまに日本研究所が消滅するという大事件に巻き込まれ、そ れでいろいろあったとき、A社の v と結婚されました。この辺の事情につい てはインターネットでメールが猛烈に流れ、最大瞬間速度達成時には、1時間 に50通くらいの電子メールが流れてきました。

でも、これ以上この件について書くと、 hirokoさんの旦那様 が読んで、hirokoさんに言いつけるので、恐いのでこれでおしまい。まあ、 旦那様はA社のプログラマなので、 もうプログラムについての心配は全くないでしょう。

ちなみに、 hirokoさんのページ もあります。


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