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第11章 奇っ怪な条件

ずぼら


東京に住んでいると、よく電車の中で、コンピュータの本、それも教科書的なものや入門書のた ぐいを、ネクタイをしめた、いかにもサラリーマンという感じの人が、くそまじめな顔をして読ん でいるのを見かけます。私はよく、場外馬券売場のある後楽園を通過する地下鉄に乗りますが、ギャ ンブルする人の目は彼らのとはまったく違い、ランランと輝いています。郷里には競艇場があり、 ギャンブラー達は食事の時間も惜しそうに、スポーツ新聞に赤鉛筆(どういうわけかサインペンは 向かないらしい)で書き込みに熱中しています。

両者はどちらが頭を使っているでしょうか。私には、どう考えてもギャンブラーの方が大脳をいっ ぱい働かせているとしか思えません。彼らの脳の方が発達しているのではと思います。ギャンブラー が、「ギャンブル用コンピュータ」を目指して彼らがコンピュータに触れれば、強力な目的意識に より、またたく間に高いレベルに到達できるのは確実でしょう。

興味の湧かない本など読んでも何も身につくものではないでしょう。いやだ、いやだと思いなが らやった受験勉強で身についたものがありますか。頭より、興味があるかないかで成績は決まって くるものです。私自身、学問には興味はあったのですが、受験勉強には全く興味が湧きませんでし た。学生当時からそのような思考をしていて、さらに磨きがかかった現在では、興味のないものは 絶対読みません(読めません)。興味のあるものだけ読めば良いではないですか。コンピュータの 知識の修得もそれでいいのではないでしょうか。

私の周りには、どういうわけか、学校へ行ってきちんといい子にしてコンピュータの「お勉強」 をしてきた人が一人もいません(本人はいい子にしていたと主張するかも知れません)。こういう 分野なら日本では彼か彼女に聞くしかないだろうという人が結構いるのですが、どうもみんな、文 部省の目指していた「期待される人間像」からは遠い人ばかりに思えます。

もう遠い遠い昔話で、そのころにはまだ生まれていなかった読者も多いと思うのは、あの学園紛 争のころ、問題を起こした学生達(当局見解による)が、日本のコンピュータの発展に極めて貢献 したというより、彼らがいなくて今の状態になり得たかと思います。

とにかくコンピュータをいじり、うまくいかないと資料をかきまわし、またコンピュータで試し てみることを私も長年繰り返してきました。私もコンピュータ教育を全然受けていない技術者の一 人です。それどころか、いろいろ本は購入するが、最初から順に読み切った本など皆無に等しいで す。それでも仕事は十分やれます。行き詰まったら、そこで初めて本を調べます。実際は、本の前 に、「誰か知らねーか?」と呼びかけます。すると、「あの本に説明があったかも知れないよ。」 という無責任な反応があり、そこでやっと本を読みだすわけです。本をあちこち拾い読みして、そ の本の価値が分かったところで、やっと、「この本は通して読む価値があるなあ」と思い直すあり さまです。それでも、まだ通読しないのが実情です。

要するに、「泥棒を捕らえて縄をなう」です。だから読んでも身につくのです。

コンピュータの本は山ほど出版されています。コンピュータの基礎をきちんと勉強しようと思っ て、基礎講座みたいなのを順に読んでいたら、読み終えたころには内容が古くなり、新版の基礎講 座が刊行されていることでしょう。

ズボラにいきましょう。ネクタイしめてバグが減るのなら、いくらでもネクタイくらいしめます が、実際はバグが増える効果しか無いようです。それでも、企業は、ネクタイで人を評価するとこ ろがほとんどです。ネクタイをして、バグ入りプログラムを作っているソフトハウスの方が、その プログラムを修正してきちんと動作するように直しているソフトハウスより裕福なのは、よくある 典型的なパターンです。これは、コンピュータサイエンス的技術だけにたけていて、営業的技術に 「うとい」と言えるのでしょうね。

すごくできる連中のスタイルは「ジーパンにTシャツ」が本当に多いものです。以前、新宿の一 流ホテルの京王プラザホテルにUNIXハッカーたちが集ったとき、ジーパンにリュックなどという、 およそホテルの雰囲気とそぐわない服装の一団が集まりました。ホテルマン達からは変な目で見ら れましたね。もちろん、こういう服装にすれば腕が上がるものでもありません。興味のないことに はズボラなため、結果的にそういう服装になるわけです。というより、よりよい作業環境を追求し た結果の服装といえるでしょうか。


Copyright1996 Hirofumi Fujiwara. No reproduction or republication without written permission
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