『Cプログラミング診断室』目次次(第12章 芸術的字下げ 安物買い)

第11章 奇っ怪な条件

まとめ


今回はCのコーディングレベルからかなりそれた話が多くなってしまいました。Cでアプリケー ションプログラムを組んでいるときでも、やはりアプリケーションが動作する環境、たとえばXの 環境がどういうものかは理解しておくべきです。プログラムとしては正しくても、環境とマッチし ないものでは使用に絶え難いものになってしまいます。

ワークステーションでGUIを強調したアプリケーションを組もうと思うと、システム全体の理 解が不可欠になります。とくに、パソコンから移って来た人の場合(大型やオフコンから来た人は もっと)、このあたりをしっかり研究しておかないと、とんでもないものを作ってしまうことにな りかねないので注意しましょう。

最近、我社に、会社訪問に来る「会社」があるのです。どうも診断室の連載が影響したらしく、 それ自体は大変嬉しいことなのです。みんなパソコンソフトハウスで、UNIX上のソフトウェア開発 を開始したばかりのところが多いです。最近はワークステーションも安くなり、どこのパソコンソ フトハウスにも2台くらいは入っていて、ネットで結んで使っているようです。

ここまでは普通なのですが、では「どういう環境で開発をしていますか」というあたりから話が 変になってしまうのです。せっかくUNIXマシンを導入しながら、プログラムの編集から、ファイル 管理まで、ほとんど全ての作業をパソコンをつないでやっているのです。UNIXマシンから、ソース ファイルをパソコンにダウンロードし、パソコンのエディタで編集し、こんどはUNIXマシンにアッ プロードしてコンパイルです。実行してバグが見つかると、また同じ手順でソースを直すのです。 UNIXマシンにパソコンをつないだといっていますが、実体は、パソコンにUNIXマシンをつないで、 パソコンの開発環境でUNIX用のソフトウェアをクロス開発しているのです。それでも、みんなUNIX マシンにパソコンをつないでいると言うのです。どうも、私には理解できない発想が世の常識なの でしょうか。

機器構成も、98にイーサボードを入れて接続は良い方で、いまだにRS232Cで接続している所も多 いようです。こんなことをするくらいなら、X端末を買った方がよほど安上がりだし、画面も広く なって便利になると思うのですが、どうも思考回路がどこまでも異なるようです。

「UNIXを使っています」という言葉くらいあてにならないものはありません。これは、「コンピュー タを知っています、使っています」というのと同レベルのあいまいな、何も意味していない文です。 UNIXの世界は、ソフトウェア開発用のツール類はいっぱいですが、パソコンの世界のようなアプリ ケーションは皆無と言い切れる未開拓地です。ただ、パソコンソフトハウスのUNIXマシンの使い方 を見ていると、彼らの力だけでは、彼ら自身が開発したアプリケーションをUNIX上に移植するのは とても困難ではと思えます。世の中、UNIX講習会がいっぱいあり、けっこうどこも繁盛していて、 ソフトハウスの技術者が勉強にでかけているようです。でも、講習会はしょせん講習会に過ぎませ ん。自ら移植しようとして、壁にぶつかり、もがき苦しみ、それから、その問題点をUNIXシステム ハウスにぶつけてみると、パソコン上の多数のアプリケーションがUNIX上でも動作するようになる のでしょう。

会社訪問団から得た情報は、パソコンソフトハウスと、UNIXソフトハウスが、まったく隔絶され たような世界を互いに構成していることでした。

■参考文献■

[11-1]Xウィンドマニュアル第7巻、「XViewプログラミング・マニュアル」、Dan Heller著、日 本語版、ソフトバンク

[11-2]The Definitive Guides to the X Window System, Volume 6, Motif Programming Manual, by Dan Heller, O'Reilly & Associates,Inc.


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