『Cプログラミング診断室』目次次(第6章 不慣れ プログラムの紹介)

第6章 不慣れ

お返事


開発現場では、「下手!」くらいは良い方で、目が点になってしまうようなプログラムに出会う ことがありますが、これらについて、「文句を書く」ことは今まで誰もしなかったと思います。な にしろ、これは暗黙のタブーです。でも、これこそが実践教育、オンザジョブトレーニングです。 読者の声には、その辺りへの期待が多く、この企画は外れていなかったと確信でき、胸をなで下ろ しています。

■フローチャート■

さて、SoftwareDesign誌の LETTERS FROM READERS のなかで、「どこを見回してもフローチャー トを使っていて、それ以外の方法で設計している者は誰もいません」というのがありました。以前、 確かに「フローチャートなんか止めてしまえ」と書きました。そして、他の設計法についての勉強 を勧めました。

私の周囲にはフローチャートを使っている人は、ずーっと前から皆無ですが、たぶん世の中の大 部分では未だフローチャートが全盛だと思います。どんな設計方法があるかは、大型書店でその手 の本を探せば簡単に見つかるでしょう。問題は、読んで理解し、実践することです。実践には、既 にその技法を使い込んでいる人が周囲にいると良いのですが、そうでない場合には挫折することが 多いようです。でも、たとえ実践までたどり着かなくても、とりあえず斜め読みでもしてください。 それもダメなら、本だけ買ってきて、「この本は読むべきなんだ」と思いつつ本文は読まず、絵の 部分だけでも良いから、気楽にながめてください。この程度でも、後で結構役立つことがあります。

コンピュータ業界では、10年以上前に、「フローチャート廃止論」が横行し、多くの技法が先 端的研究開発部門などで試されました。しかし、決定打といえる技法は誰も未だに見つけていませ ん。ただ、フローチャートはきわめて問題を起こしやすいので、「使用禁止」ということでは意見 はまとまりました。しかし、多くの技術者は、この議論から落ちこぼれてしまいました。専門学校 などでも、今だにフローチャートを教えているようですが、原因は、通産省の情報処理技術者試験 に、まだフローチャートがあるからでしょうか?通産省の研究所ではもう使っていないようで、本 当に矛盾していますよね。確実に言えることは、フローチャートを未だに使用しているところは優 秀ではないということです。

■個条書■

私の場合、いろいろな方法を試してきましたが、今では基本的には「個条書」だけで設計してい ます。個条書は、アイデアという抽象的内容をまとめたり、伝えたりするために人類が何千年も使 い込んだ技法であり、実践例もメチャクチャ多く、コンピュータのためにわざわざ考えだした技法 よりはるかに多くの試練に耐え抜いた、超優れ物です。それに、C言語の1つの関数を個条書で表 現できないようなら、設計技法の選択の問題ではなく、プログラム全体をどう構成するかという、 もっと根本的な問題です。

■友達の輪

以上で返事になっているかというと違うのです。一番肝心なことは、周囲にはフローチャートを 使っている人しか見つけられないことです。それは、「技術者仲間の輪(ネットワーク)」を作っ ていないからだと思います。コンピュータ技術者をやっていて、技術的問題を解決するのに役立っ ているのは、友達の輪(どこかの番組みたいですね)、知人の輪、人の輪です。良いコンピュータ を使っても、本や雑誌を読みあさっても、限界があります。この限界を打破してくれるものは、こ の「輪」しかありません。どんな優秀な会社では、社内だけの輪では不足でしょう。上司たるもの、 この輪をせっせと広げてあげることが仕事でしょう。

もし私のこの輪が今より遥かに小さかったら、私は下級コンピュータ技術者か、自分の無能さに 打ちひしがれ引退していたことでしょう。


Copyright1996 Hirofumi Fujiwara. No reproduction or republication without written permission
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