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第６章　不慣れ

類似パターン

今回のプログラムの特徴の１つは、類似パターンがいっぱい出てくることです。類似パターンは、 エディタでコピーし、ちょっと変更するとできるので、とりあえずの作成時間は短く、リストもど んどん長くなるので、作業が進んでいるように感じるでしょうが、後で「泣き」をみます。

■字下げ■

リスト６−１１は、長ーいswitch文中の一部です。最初のcase中で、ifブロックの中が全然字下 げされていません。１行80字にこだわったため、自然な字下げを行うと、収まりがつかなくなって 字下げを止めたのではと思われます。こういうときは、半分の４文字分の字下げでその場を取り繕 うことができます。でも、問題は、１行80字なんてことをしているからです。

　
リスト６−１１　深いcase 

     1	                case PANEL_CHOICE_STRINGS:
     2	                        if ( item->win_type == MY_PANEL_CHOICE ) {
     3	                        len = -1; size = 10;
     4	                        while ( (ctemp = va_arg( ap, char* )) != 0 ) {
     5	                                len ++;
     6	                                if( len == 0 ) {
     7	                                        pointer->panel_choice_strings =
     8	                                                (char**) malloc ( size
     9	                                                        * sizeof(char*) );
    10	                                }
    11	                                if( len+2 > size ) {
    12	                                        size = size * 2;
    13	                                        old = pointer->panel_choice_strings;
    14	                                        pointer->panel_choice_strings =
    15	                                                (char**) realloc( old,size
    16	                                                            * sizeof(char*) );
    17	                                }
    18	                                *((pointer->panel_choice_strings)+len) = (char*)
    19	                                    malloc( (strlen(ctemp)+1)*sizeof(char) );
    20	                                strcpy( *((pointer->panel_choice_strings)+len),
    21	                                                ctemp );
    22	                        }
    23	                        len++; *((pointer->panel_choice_strings)+len) = NULL;
    24	                        item->attr = (caddr_t) pointer;
    25	                        }
    26	                        else
    27	                                while ( va_arg( ap, char* ) != 0 ) ;
    28	                        break;
    29	                case PANEL_CHOICE_FONTS:
    30	                        if( item->win_type == MY_PANEL_CHOICE ) {
    31	                                len = -1; size = 10;
    32	                                while ( ftemp = va_arg( ap, myPixfont* ) ) {
    33	                                        len++;
    34	                                        if( len == 0 )
    35	                                                pointer->panel_choice_fonts =
    36	                                                        (myPixfont**) malloc(
    37	                                                        size*sizeof(myPixfont*));
    38	                                        if( len + 2 > size ) {
    39	                                                size *= 2;
    40	                                                oldf = pointer->
    41	                                                        panel_choice_fonts;
    42	                                                pointer->panel_choice_fonts = 
    43	                                                        (myPixfont**) realloc(
    44	                                                        oldf, size*sizeof(
    45	                                                                myPixfont*));
    46	                                        }
    47	                                        *(pointer->panel_choice_fonts+len) = 
    48	                                                ftemp;
    49	                                }
    50	                                len++;
    51	                                *(pointer->panel_choice_fonts+len) = NULL;
    52	                        }
    53	                        else
    54	                                while ( va_arg( ap, myPixfont* ) != NULL );
    55	                        break;
    56	                case PANEL_TOGGLE_VALUE:
    57	                        pointer = (myPanel_Item_Choice*) item->attr;
    58	                        if( pointer->panel_toggle_val == NULL ) {
    59	                                pointer->toggle_size = 5;
    60	                                pointer->panel_toggle_val = (int*)
    61	                                        malloc( pointer->toggle_size*
    62	                                                                sizeof(int) );
    63	                                pointer->toggle_index = (int*)
    64	                                        malloc( pointer->toggle_size*
    65	                                                                sizeof(int) );
    66	                                pointer->toggle_count = 0;
    67	                        }
    68	                        else if ( pointer->toggle_count >=
    69	                                                pointer->toggle_size ) {
    70	                                pointer->toggle_size += pointer->toggle_size;
    71	                                itempa = pointer->panel_toggle_val;
    72	                                pointer->panel_toggle_val = (int*) realloc(
    73	                                     itempa, pointer->toggle_size*sizeof(int) );
    74	                                itempa = pointer->toggle_index;
    75	                                pointer->toggle_index = (int*) realloc( itempa,
    76	                                        pointer->toggle_size*sizeof(int) );
    77	                        }
    78	                        itemp = va_arg( ap, int );
    79	                        *(pointer->toggle_index + pointer->toggle_count) =
    80	                                                                        itemp;
    81	                        itemp = va_arg( ap, int );
    82	                        *(pointer->panel_toggle_val + pointer->toggle_count) =
    83	                                                                        itemp;
    84	                        pointer->toggle_count++;
    85	                        break;

どんどん字下げのネストが深くなってどうしようもないプログラムを見ることがあります。必要 以上にネストが深くなるのは、if文による枝分かれで、特にエラーチェックのときに深くなるよう です。

深くならない「こつ」の一つが、if文でエラーの場合を先に処理することです。エラー処理の最 後にbreakなどを置くことで流れが途切れるので、正常時の処理は字下げが不要になります。本来の 目的の処理の前で、エラーチェックがすべて行われると、以降は正常処理だけに専念すればよいの で、楽にもなります。修正版のリスト６−１３では、異常なときの可変引数の読み飛ばしをしてい ます。

■malloc, realloc■

reallcのとき、第１引数のポインタは、必ず直前で別の変数oldに代入してから使っています。 これは、reallocの引数と、reallocの戻り値を入れるポインタが同一だと、何かが破壊されてしま うと思いこんでいるようです。これは、FORTRANをやっていたため、引数はアドレス渡しが身に染 み込んでしまっているからでしょう。Ｃの引数は、すべて値渡しです。アドレスを渡したいときは、 ＆をつけて本当にアドレスを渡すのです。アドレスという値を渡すので、やっぱり値渡しなのです。 なぜなら、この場合も値を返すには、引数の前に＊をわざわざつけて、アドレスという値の指す場 所に代入させるからです。

３つのcaseの中をながめると、データを入れる領域を確保するためにmalloc、確保した領域内に 収まらなくなったときにreallocを使っていますが、３つとも似た使い方をしているので、共通化 が考えられます。最初の２つのcase中のif文で細工をしている領域はそれぞれ１つですが、最後の は、panel_toggle_valとtoggle_indexが指す２つの領域があります。これらをまとめて面倒をみよ うとして書いた関数がリスト６−１２のunit_allocです。ここでは、領域がまったく確保されてい ないことの判定をcount==0で行っています。reallocでは、同じポインタを２回使いますが、ポイ ンタの記述が長くなってくると、プログラムがごちゃごちゃしてきます。そのため、ポインタのア ドレスを渡しています。領域のサイズは、chgsizeというフラグを設けて、真のときだけ変更され るようになっているので、複数の領域を確保するときは、最後だけTRUEで呼び出しています。もち ろん、１つしか領域を確保しないときもTRUEで呼び出します。

元の３つのreallocのときのif文の判定は同一ではありませんが、ゆとりのある方を採用するこ とで共通化しています。領域がデータ１個分余分になりますが、大したことではありません。プロ グラムがすっきりする方が優先されるべきですね。

　
リスト６−１２　共通関数 

     1	/********************************************************************************/
     2	/*      文字列を入れる領域を確保し、文字列をコピーする                          */
     3	/********************************************************************************/
     4	char    *alloc_strcpy( str )
     5	IN      char    *str;
     6	{
     7	        char    *ptr;
     8	
     9	        ptr = malloc( strlen(str) + 1 );
    10	        strcpy( ptr, str );
    11	        return  ptr;
    12	}
    13	
    14	/********************************************************************************/
    15	/*      １ユニット分の領域を追加確保する                                        */
    16	/********************************************************************************/
    17	void    unit_alloc( pptr, chgsize, size, count, initcount, unitcount )
    18	INOUT   void    **pptr;         /* allocした領域                */
    19	IN      int     chgsize;        /* sizeの値は変更されるか       */
    20	INOUT   int     *size;          /* 領域の大きさ                 */
    21	IN      int     count;          /* 領域内の実データ個数          */
    22	IN      int     initcount;      /* 初期allocのデータ個数 */
    23	IN      int     unitsize;       /* データ１個分のバイトサイズ   */
    24	{
    25	        int     n = 0;
    26	
    27	        if( count == 0 ) {
    28	                n = initcount;
    29	                *pptr = malloc( n * unitsize );
    30	        } else if( count+2 > *size ) {
    31	                n = *size * 2;
    32	                *pptr = realloc( *ptr, n * unitsize );
    33	        }
    34	        if( chgsize && n>0 )
    35	                *size = n;
    36	}

文字列を入れるためにぴったりのサイズの領域をmallocで確保し、その中に文字列をコピーする ことは、プログラム全体のあちこちで行われていました。簡単なことですが、３つもの関数 strlen, malloc, strcp を使っているので、長い同じ変数が２回現れても嫌になります。これを行 う関数を、リスト６−１２にalloc_strcpyとして入れています。単純ですが、多数出現しているし、 関数にしてしまうと、ずいぶんすっきりしてきます。

２つの関数を作ったことで、ぐちゃぐちゃしていたものが、リスト６−１３のように、短く、すっ きりしました。

sizeof(char)がありますが、これは１に決まっているので、省略する方がすっきりします。

　
リスト６−１３　浅いcase 

     1	                case PANEL_CHOICE_STRINGS:
     2	                        if ( item->win_type != MY_PANEL_CHOICE ) {
     3	                                while ( va_arg( ap, char* ) != 0 );
     4	                                break;
     5	                        }
     6	                        for( size=10,len=0; ctemp=va_arg( ap, char* ); len++ ) {
     7	                                my_alloc( &pointer->panel_choice_strings, TRUE, &size,
     8	                                                len, 10, sizeof(char*) );
     9	                                pointer->panel_choice_strings[len] = alloc_strcpy(ctemp);
    10	                        }
    11	                        pointer->panel_choice_strings[len] = NULL;
    12	                        item->attr = (caddr_t) pointer;
    13	                        break;
    14	                case PANEL_CHOICE_FONTS:
    15	                        if( item->win_type != MY_PANEL_CHOICE ) {
    16	                                while ( va_arg( ap, myPixfont* ) != NULL );
    17	                                break;
    18	                        }
    19	                        for( len=0; ftemp=va_arg( ap, myPixfont* ); len++ ) {
    20	                                unit_alloc( &pointer->panel_choice_fonts, TRUE, &size,
    21	                                                len, 10, sizeof(myPixfont*) );
    22	                                pointer->panel_choice_fonts[len] = ftemp;
    23	                        }
    24	                        pointer->panel_choice_fonts[len] = NULL;
    25	                        break;
    26	                case PANEL_TOGGLE_VALUE:
    27	                        pointer = (myPanel_Item_Choice*) item->attr;
    28	                        initsize = 5;
    29	
    30	                        unit_alloc( &pointer->panel_toggle_val, FALSE, &pointer->toggle_size,
    31	                                    pointer->toggle_count, initsize, sizeof(int) );
    32	                        pointer->toggle_index[pointer->toggle_count] = va_arg( ap, int );
    33	
    34	                        unit_alloc( &pointer->toggle_index, TRUE, &pointer->toggle_size,
    35	                                    pointer->toggle_count, initsize, sizeof(int) );
    36	                        pointer->panel_toggle_val[pointer->toggle_count] = va_arg( ap, int );
    37	
    38	                        pointer->toggle_count++;
    39	                        break;

Copyright1996 Hirofumi Fujiwara. No reproduction or republication without written permission
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