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ま え が き


この頃、テレビ、ラジオ、新聞、さらに駅の広告まで「インターネット、インターネッ ト」と毎日うるさい。本屋に行くと、毎日1冊ずつ、インターネット関連の書籍が出てい ることも確かめられる。昨今は、インターネットができないと、落ちこぼれのような騒ぎ である。

私自身は、インターネットが育ってきたUNIXという科学技術系のコンピュータを十 数年間使用してきたので、インターネットの世界には自然に入ってしまったし、この世界 の普及も早い時期から見てきた。また、周囲の技術者の多くはインターネット技術者でも あるので、自分ではほとんど何もしなくてもインターネットを自由に使える恵まれた特別 な環境にいたことも幸いした。

一般の人々には、インターネットぐらい得体の知れないものもないのではないかと思う。 本や雑誌などには、奇麗なカラーのホームページの絵が載っていて、エッチな絵を日本の 法律を無視して自由に見ることができることなどが書かれている。その他にも、たいてい の情報はインターネットで入手でき、買物も非常に便利にできるように書かれている。企 業に対しては、「ホームページも開設していない企業は遅れた企業」というふうに書かれ たものが多い。インターネットを利用した商売の話も盛んである。

しかし、実際には、世間で騒がれているほど価値があるものであろうか。日本でインター ネットの普及が本格化したのは1995年後半くらいからである。まだ普及が始まって1 年も経っていないので、やっと夜明けを迎えたに過ぎない。普及のペースは年に何倍と驚 異的に高いが、インターネットを取り巻く社会環境は極度に未整備であり、何をやっても 壁にぶつかってしまうのが現状である。

本書では、インターネットの技術的解説は他書に任せて、日々変化しているインターネッ トの実情を紹介する。インターネットやコンピュータについての技術的知識は一切前提に しないし、触ったことがなくても理解できるように心掛けた。

内容は、私の周囲で実際に起きた、とんでもない話、馬鹿な話、さらには詐欺まがいの 話まで、実際に私または私の周辺の人々が直接遭遇した問題を紹介する。

インターネットは発展のペースが激しいので、混乱は日常的である。高度情報化社会の 基幹ビジネスと騒がれているため、何の知識も経験もない企業や組織が、バブルの再来を 夢見て新規参入してくる。その計画や手口は呆れるばかりであるが、そういう出来事につ いて、可能な限り正確に紹介していく。

はっきり言って、現在の日本のインターネットはボロボロである。まだ不可能なことま で可能なように紹介されている。「情報発信」と盛んに言われているが、レベルの高いと ころで紙媒体、つまり本や雑誌の情報に若干の手を加えて提供しているのが限度である。 現状では、評価に値するのは1%もあるだろうか。

コンピュータ関連企業ならインターネットもしっかりしているように世間は思っている ようだが、それらの多くは既に落ちこぼれつつある。インターネットは単に技術の問題だ けではなく、仕事のみならず、思想や生活までも変化させる可能性がある。硬直化した企 業や団体は、新しい思考哲学を身につけた新しい企業や団体と入れ替わらざるを得ない。

インターネットは、これから設備も、提供される情報も、利用のされ方も大いに変化し てくるので、今の現状を単純に批判しても意味がない。それよりも、インターネットに対 して各自がどういう考えで臨むべきかの参考になるように、生の現実と私の分析や考えを そのまま記すようにしたので、かなりきつい表現も多いと思う。

原稿を書き始めた2月末と、ほぼ書き終えた5月末では大いに状況は異なった。一度書 き終えてから、5月末の状況に合わせて多くの記述に手を入れた。日々変化しているイン ターネットの現状をつぶさに報告しようとすればするほど永久に修正が継続しそうであっ たが、5月末日の状況で本書の内容を固定することにした。

本は出版し、読んでいただかなければ意味が無いので、無限に続く変化の5月末の切口 を示した。その後の変更などについては、私個人のホームページで随時情報を流し続ける ことで、正確を期することにした。

本書により、読者の方に、インターネットについての情報、それも他書で得られない範 囲を提供できたなら光栄です。

1996年6月 藤原博文


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