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失敗は隠せ


プログラム開発は失敗の連続である。失敗しては、その原因を突き止め、改 良し、使えるプログラムに仕上げていく作業である。今まで作っていた物を捨 てて作り直した方が良い場合もある。開発そのものを中止すべき場合もある。 まあ、プログラムは人間が作っていて、その人間は非常に失敗を犯し易いもの だから、プログラム開発が失敗だらけなのは当然である。コンピュータ技術者 がどのような失敗を犯すかについては、何冊かの本が出版されている。残念な のは、日本人の書いたのは殆どなく、たとえあっても著者の技術レベルを疑う ようなものにしかお目にかかれない。評価できるのは翻訳で、ワインバーグ氏 の翻訳本のシリーズ本は特に有名である。

ところで、コンピュータ技術者の犯す失敗の分析を行なうのは本書の目的で はない。コンピュータ技術者を使う立場の人間に役立つことを書くのが目的で ある。実際にそこまで書くのは難しいので、せめて現状をできるだけ正確に知 らせ、馬鹿な判断が若干でも減れば幸いである。

開発を進めていく、つまり仕事をやってもらっているうちに、相手の様々な 実力が分かってくる筈である。特に、複数の会社から技術者が来ている場合に は、レベルの比較が容易にできるので、誰が有能で、誰が無能かは次第に明白 になってくる。問題は、そうなってからの対処である。

ここで、無能な技術者を仕事から外すことができれば、本当に優秀な管理職 と言える。ただし、外された方はきっと文句を言うし、外されないように色々 根回しをするであろう。

でも、一般にはどういう行動を取るであろうか。

以前、既にでき上がっているプログラムを、別のコンピュータでも動くよう に変更する仕事を引き受けた。こういう仕事を、プログラムの「移植」と言う。 そして、そのプログラムがやってきた。ちょっと見ただけで、想像を絶するく らい下手なプログラムであった。とても、しらふで見る気になるようなプログ ラムではなかったので、日本酒片手に、仕事仲間といかに下手か論評しあった。

そのプログラムを作った会社が分かった。資料が整っていないし、どのよう に作られているかを開発者から直接聞きたいし、そうした方が移植に無駄な労 力を費やさなくて済むので、開発者に会えるように、仕事を出してくれた会社 の担当者に調整してもらい、実際に会った。

我々とは違い、彼等は、ちゃんとしたスーツで、いかにも真面目なビジネス マンです、と誇示したげな様子だった。でも、技術力のなさはすぐに露呈しだ した。ミーティングが始まり、最初は自信を持って説明していたが、こちらが 質問するにつれて、しだいに当惑に満ちた発言になり、言うことは 無茶苦茶 になっていった。まあ、技術力のなさは、会うまでもなく、彼らの作ったプロ グラムを見た時に大体の想像はついていたが。それより、「顔が見たい」とい うのがあって会った次第である。

私が驚いたのは、そんな会社に、どうして仕事を出さなければならないか、 ということであった。もっとレベルの高い会社、もっと正確には、その会社の 技術者より有能な技術者はどこにでも存在するする筈なのだ。町を歩いている 女の子をつかまえて、ちょっと教育しただけでも、もっと良いプログラムがで きると思われる程である。

長年この会社に仕事を出しているので、担当者は当然そういう事実に気がつ いている。それでも、そこに仕事を出し続けているのである。今までに払った であろう金額の半額以下で、ちゃんとした会社なら、ちゃんとしたプログラム を作れる。これは、金銭的に言えば億単位の損害である。

それだけではない。会社にとって、そのプログラムは重要な製品の制御をし ており、プログラムの出来のよしあしは、営業的には極めて大きな差になって 出てくる。

私の疑問は、そういう状態が誰の目にもはっきりしているのに、どうしてそ のままにしているかであった。しかし、こういうことは、実際には良くあるこ とである。大きな企業になればなるほど、こういう問題を抱えているのだ。

だれもはっきりとは理由を教えてくれない。だから想像するしかないのだが、 そういう問題があって、開発を他の会社に切り換えることは、今まで発注し続 けた責任をとらされることになる訳だ。実際に責任を取らされるかどうかはと もかく、問題になり、上司から色々言われることは間違いないだろう。たぶん、 これを恐れて、現状維持を続けているのだろう。現状維持が一番居心地が良い。


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