目次次「入札」

不良CPUの交換に金を取る


コンピュータの中の部品で一番重要なのがCPUである。中央演算処理装置とも言う。 これは、コンピュータ全体を制御し、かつ計算などを行なう、いわゆる「頭脳」と呼ばれ る部分である。コンピュータの性能の大部分は、このCPUで決まる。だから、コンピュー タの選択をするとき、一番に注目する。

コンピュータのハードウェアや、有力なソフトウェアに重大な誤りが発見されると、新 聞やテレビで報道され、回収劇となったりする。しかし、ユーザがコンピュータを十分に 知っていないと、販売側に明らかに責任があっても、うやむやにされることがある。

もうかなり前になるが、パソコン上で簡単な3次元CADのプログラムを組んだ。それ で、当時(1985年頃)発売になったばかりのパソコンを手に入れ、作業を始めた。も ちろん、3次元立体幾何学の計算をするので、三角関数などの計算を高速に行なう必要が 生じた。そのためには、数値計算を高速に行なう「数値演算プロセッサ(コプロセッサ)」 というLSIを附加しなければならなかった。コンピュータの筐体を開け、数値演算プロ セッサを入れる場所があったので、そこに差し込んだ。これで、数値計算が高速になる筈 であった。

しかし、結果はまるで逆であった。動かなくなってしまった。仕方がないので、あれこ れ調べ始めた。コンピュータの筐体をもう一度開けて、CPUを取り出して確認する。よ く見ると、型番が弱冠異なっている。80X86であるべきものが、80X86−3になっ ている。余分の記号の「−3」がついている。こういうのがくせ者である。こういう記号 は正式の製品にはつかない。サンプル出荷の品だろうということは見当がつく。

まず、手始めに、CPUを製造したメーカーに電話を入れて問い合わせる。色々と情報 を得て、次に、教えてもらった、そのCPUの販売会社の技術サポートに電話を入れる。

そうしているうちに、蛇足の記号の意味が分かってきた。これがついていると、数値演 算プロセッサを附加しても絶対に動かない代物だということを教えてくれた。さらに、正 常なCPUを用いたときに数値演算プロセッサを動作させるための電子回路の概略も教え てくれた。大変親切な対応だった。

それで、もう一度パソコンを開けて、CPUの周りの回路を調べた。すると、電話で教 わった通りの部品がちゃんと並んでいる。ということは、正常なCPUを装着すると、数 値計算も高速にできるようになるだろうことは想像できる。わざわざ無駄な回路を作ると は考えられない。

次は、仲間に連絡をする番である。やはり何人かが、このコンピュータを使っていた。 そして、不思議なことには、何個所かでは、メーカーの方から正常なCPUを持ってきた ことが分かった。その殆どは、メーカーがそのコンピュータを無償で貸し出している、そ のメーカーとの関係が強いところである。

さらに、メーカーの純正品として売られている数値演算プロセッサには、おまけとして 正常なCPUがついていることも分かった。しかし、パソコンメーカーの数値演算プロセッ サの価格は法外であった。

まあ、秋葉原のパソコンメーカー直営ショップへ行けば、正常なCPUに交換してくれ ると思って訪れた。するとどうだろう、交換してくれない。それどころか、私がどうして 動かないかを知り得たか詰問してくる。パンフレットなどに表記しているCPUの型番は 正規の製品のであるにも関わらず、別の不完全品が入っていたのである。どう考えたって 無償交換が当り前である。

店頭で揉めていると、どう対応するか、本社かどこかに電話をかけていた。
「あれ(正常なCPU)は2万円もしたんだ。ただでは渡せん」
なんて声が電話口から漏れ聞こえてきた。どこまでも、人を騙し続けようとしていた。

後日、それも大分経ってから、申し訳ありません、と一言だけ書いた紙切れと共に、正 常なCPUが郵送されてきた。実際には、この郵便が届く前に、メーカーから別ルートで 正常品をもらって、とっくに使っていた。

この話は、まだこれでは終わらない。このパソコンの売れ行きは芳しくなかった。こう いうとき、有力大学などに寄付するのが流行っていた。よく出入りしていた東京大学の某 学科にも寄付され、コンピュータ教育用に使われることになった。その学科の二人の教授 から、このコンピュータ室のサポートを頼まれた。日本最初のマイコンゲームを作り出し たような大学院生がいるような学科である。私が技術的なことを教えるなんてとんでもな い、こっちが教えて欲しいようなところである。まあ、純粋に技術的なことではなく、そ れ以外のサポートが欲しかったのだと思う。

コンピュータは無償だったが、その他のオプションなどは有償らしかった。学科の性格 上複雑な技術計算が必要なので、数値演算プロセッサは必須である。しかし、その当時は まだ数値演算プロセッサは高価だったので、何台のコンピュータに数値演算プロセッサを 装着するかを検討していた。

その間に、メーカーの手でパソコンの調整がなされ、コンピュータ室に並べられた。す ると、どうであろう。いつの間にかCPUが正常品に交換されていた。なぜだ。きっと東 大は無償交換の対象だったのだろう。

それにしても、ユーザを徹底的に馬鹿にした話だ。当時、別のパソコンメーカーのユー ザー対応が悪いと言ってテレビで取り上げられていた。でも、これに比べれば、まったく 大したことではなかった。

そのうち、パソコン雑誌社の者と会った。この問題も話題になった。雑誌などへ発表す るかどうかも含めての話になった。が、そのうち、うやむやになった。

不良が発生し、計算が狂ったり、データが破壊したりすることは、不完全な人間が作っ たコンピュータのやることだから仕方がない。しかし、はっきり不良が分かっているのを 騙し続けるのがいることもある。相手が無知だろうと判断すると、大手を振って騙しにか かろうとすることがある。それが暴露すると、脅迫してくるのさえいる。

こういう対応を取られたことは非常に少ないが、多くの場合、こちらの肩書きやコンピュー タの知識レベルなどが相手に事前に知られているので、初めからきちんと対応してくれた のかも知れない。一般に、コンピュータ技術者、それも服装がキチンとしていないような 技術者が相手をしてくれた時は、どこのメーカーも概して親切である。その反対の場合は、 注意して対処した方が賢明のようである。

無知でいると、何をされるか分かったものではない。くわばら、くわばら。

美しいパズルとは

ナンプレ問題
自動生成


これで、今日から
貴方もパズル作家

Cパズル
プログラミング
〜再帰編〜


Copyright1996,1999 Hirofumi Fujiwara. No reproduction or republication without written permission
目次次「入札」