目次次「シグマ計画」

入札


公立の学校も含めて、役所というところにコンピュータが導入される時、必ずといって いいほど入札という方法が取られる。昔、1円入札というのが新聞を賑わしたが、あの入 札の話である。

もちろん、庶民から集めた税金などでコンピュータやそれを動かすソフトウェアを購入 するのであるから、できるだけ安いのが良い。

某国立大学のあるコンピュータ関係の学科で、コンピュータ・システムを購入すること になった。その時点で適当なのは、どこのメーカーのどのコンピュータかということは分 かっていた。保守のことも考えて、完全に技術的な立場から、導入メーカーは決定してい た。

研究室レベルなら、まあそれで十分であろうが、学科としての導入となるとそうは行か ない。きちんと、公平に入札を行ない、不正が行なわれなかったことを明示しなければな らない。問題は、入札の時、決定は価格のみによって判断されるので、対抗メーカーが低 い見積もりを出すと、そちらに決まってしまうことである。これを阻止しないと、研究や 教育がストップしてしまうこともある。

入札の前に、技術的なチェックが行なわれる。購入に足る製品かどうかを判断する訳だ。 この判断だけは、100%学科側に任せられる。彼等以外に判断できる人はいない訳だし、 実際の利用者なのだから、当然の権利であり、義務でもある。

ここで重要なことがある。導入責任者は、大抵学科の主任教授とか、導入委員会の代表 で、やはり主任教授並みの人になっている。キチンとした肩書きがないと、導入責任者に はなれない。このとき、この責任者の名前で、技術チェックをしてはいけない。助手あた りにチェックをさせて、報告書を書かせるのである。そのとき、必用条件を満たす製品が 1つになっても構わない。もし、それ以外が使い物にならないのなら、1つになって当然 なのである。メーカー毎に、性能、使い勝手などが違うのだから、単に合格、不合格だけ ではなく、A社のが1000万円なら、B社のは使用には堪えるがせいぜい600万円が いいところという風にビシッと書いておくべきである。実際にそうなら、そう書くのが技 術者としての良心である。

これでは、入札が骨抜きになってしまうと思うであろう。でも、技術者としての良識に よりそうなったのなら、それが正しいのである。その学科でも、そのようにして、正しい 選択が行なわれた。

公立の学校にコンピュータ教室が開設される時など、猛烈に安い価格で入札が行なわれ る。時には1円になったりする。学生が自社のコンピュータに慣れてくれれば、将来の市 場が開けると思って超低価格で入札するのは、企業としては当然であり、何も問題はない。 それで安くて良いコンピュータが入手できるなら、学校側も問題ないだろう。 ところが、私の同級生が先生をしている市立短期大学の実情はそうではなかった。性能 や、その後のことを考慮しての導入ではなかった。とくに、地方都市の市立短期大学など では、なんとか生徒にコンピュータ教育をと思うのか、コンピュータ導入の予算だけはど んどんつくようだ。物さえ買えば教育できると思っているのだろうか。こういう場合は、 メーカーにとって一番扱い易い。一旦導入させれば、あとはメーカーの自由になるのであ る。

最初の導入さえ低額にしておけば、入札にはまずパスする。そこで、次々と付属品やら 消耗品を売るのである。つまり、こちらで、じっくり、がっぽり儲けるのだ。安い物を買っ たと思ったのは誤りで、実は大変高い買物をしている。

まあ、このくらいで済めば良い方である。安いだけで、使い物にならない粗大ゴミを買 わされることもよくある。私の同級生は、結局、短大に導入された機種は使い物にならな いので、個人的に別の機種を買ってしまった。彼女はワープロや簡単なデータ処理をする だけだが、それすらも導入された機種には殆ど揃っていなかった。

別の国立大学での、10年程前の話である。某メーカーの大型コンピュータが学科の専 用コンピュータとして設置された。コンピュータと各研究室を通信回線で結ぶ必要があり、 業者に工事をしてもらった。工事内容は単純である。業者を頼まなくても、材料だけ購入 して学生なり院生にやらせれば十分な内容であったが、きちんとした工事をしないとコン ピュータの動作が保証できないといって、結局600万円も払って工事をした。どう考え ても100万円になる筈がない工事だ。それに、保証というけれど、ちゃんとしたケーブ ルを購入しさえすれば何も問題はない筈だ。

事務処理上の問題で、600万円を無駄にした訳だ。600万円の研究費があれば泣い て喜ぶ研究室だってあるというのに、企業の脅しに負けてしまった。内容を理解できる助 手たちが悔しがるのは当然だ。

これは学校や役所ばかりの話ではない。企業も規模が大きくなると、役所的になり、殆 ど同じ失敗をしているのをしばしば見かける。くれぐれも、初期の金額だけに目がくらん でしまわないように、ご注意申し上げる。

『プログラミング
Gauch』
O'Reilly Japan刊

鋭意作成中状況

出版記念
gauche.night

3/8(土)18:00〜
お台場
前売券:1500円
当日券:2000円

主催
オープンソース
Scheme言語処理系
Gaucheの愛好者団体

gauche.gong
出場者募集中

詳細はブログで


Copyright1996,1999 Hirofumi Fujiwara. No reproduction or republication without written permission
目次次「シグマ計画」