![]()
書名 最高学府はバカだらけ
全入時代の大学「崖っぷち」事情叢書 光文社新書 318 著者 石渡嶺司 発行日 2007年9月20日 発行元 光文社 頁数 新書判、256頁 定価 740円(本体) ISBN 978-4-334-03419-1 本書は、大学、それも一流といわれている(思われている)大学の内情は実はこんなんだよ、 というのを本と思って、知ってはいたが今迄は手にも取らなかった。 が、偶然、もうちょっと見てみようかと思い、少し立ち読みした。 この手の本にしては、まじめに調査しているかに見えたので、つい読んでみたのである。
章の構成は、以下のようになっている。
「情報公開をめぐる講演」は、いかに大学教授が大学以外の組織の情報公開を糺弾しながら、 大学自体の情報公開はちっともしていないことを皮肉った内容になっている。 大袈裟なところもあるが、本音がしっかり出ているところが面白い。
- アホ大学のバカ学生
- バカ学生を生む犯人は誰か?
- バカ学生の生みの親はやはり大学!?
- 大学の情報公開をめぐる二つの講演
- ジコチューな超難解大
- 「崖っぷち大学」サバイバル
- バカ学生はバカ学生のままか?
東大、京大、慶應、早稲田の話が多いが、その他の難関大学についても、いろいろ書かれている。 つねに批判ばかりしている訳でもなく、各大学がどのようにバカ学生をなんとかしようと 努力している部分も書かれている。
友人に大学教員はかなりいる方だし、こっそり教えてくれる情報も多々ある。 それらと合わせて考えると、まだまだ甘いのではないかと思える部分も多い。 本書は、大学生および大学の批判になっている訳だが、 現実は、大学院生および大学院についても、実は全入時代みたいなことになっていて、 大学院まで行ったのだから、さぞや研究に打ち込んだのだろうと思うと 大きな誤解を生む。次は、そのあたりも書いて欲しいものだ。
最後の「バカ学生はバカ学生のままか?」であるが、「バカ学生のままでないことがある」 という点について書いている。 この説明のために、「化学反応」という言葉を使っている。 現象そのものは知っていたが、こういう用語を使う手があったのかと感心した。
化学反応とは、要するに、きっかけ、きづき、のことである。 それが起きると、当然目的意識がわき、モチベーションが一気に向上する訳である。 勉強、社会性、色々な面か一気に良くなって、バカ学生だったものが、 短期間に見違えるような立派な社会人予備軍になっていくことがある話である。
もちろん、そういう化学反応が起きるように積極的に仕掛けている大学も存在し、 そういう例を幾つも紹介している。 このきっかけは、何の大学内に限らない。 というより、大学に閉じこもっているより、大学から飛び出し、 他大学との交流、つまりインカレをやったり、 あるいは就職活動で面接官に注意されて急に良くなったりするようである。
要するに、本書を要約すると、今の大学は社会性に欠ける、欠け過ぎているという 一点に絞られるような気がする。
カフェとかに行くと、就職活動している学生たちが、情報交換している場に出逢うことがある。 中には、熱心に、学生同士で、模擬面接の練習までしているのである。 しかし、どこかというより、完全にピントが外れているとしか思えないことが多い。 この本は、就職する学生にもお薦めである。
最後に、本書のタイトル「最高学府はバカだらけ」であるが、 「バカばかり」ではないところが肝心だ。 実際、最高学府の方が、しっかり色々やっている教職員も多い気がする。
2008年3月16日