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書 名英語オンチが国を亡ぼす
文庫新潮社OH!文庫 015
著 者寺澤芳男
単行本1997年3月 東洋経済新報社より刊行。
発行日2000年10月10日 初版第1刷
発行元株式会社 新潮社
定 価543円(本体)
サイズ文庫判 253ページ
ISBN4-10-290015-2

私も英語オンチであるが、それでも英語は重要であり、ビジネスには欠かせな いものだとは思っている。著者は、元経済企画庁長官であり、さらにその前は MIGA(Multilateral Investment Guarantee Agency = 多国間投資保証機関)という いかめしい名称の国際機関の長官を4年間、それも発足時のを務めた人である。

まあ、こういう仕事をしていて、自らを「英語オンチ」と名乗るのであるから、 たいしたものかも知れない。私が「パソコン初心者」というのとは桁が違う気がする。

英語オンチが国を動かしたりしているととんでもないことになる、つまり国を 危うくするということが延々と書いてあり、まあ納得できる部分もあるし、色々な 情報があって、参考にはなる。

しかし、一番納得したのは、そういうことではなく、次の一文であった。

 閣議というものがいかに形式的で単なるセレモニーに過ぎないことか。 おびただしい稟議書に黙々と花押を書き記す空虚な時間……。
 信じられないだろうけれど、みんな本当の話である。
(135ページ)
どうせそうに違いないということは想像できていたのだが、やはり元閣議出席者 がそういう風に書いてくれることは重みが違う。この一文を見つけられて、本書を 購入した価値は充分にあったと満足した次第である。

さて、本題の英語オンチと亡国論であるが、ちょっと単純過ぎるかなとは思った。 というのが、日本語を母国語としていると、どうしても他人と同じ考えを持ち、 つまり没個性になる。母国語が英語であれば、To be different ということで、 個性を持った人が育つらしい。

しかしなぁ、私はずっと日本語だけでやってきたが、子供の頃からずっと一貫して 「違うなぁ」と言われ続けて来た。英会話学校へ、やむなく英語の勉強をしに会社の 金で行ったときに、レベルチェックのための能力試験があったが、これがまた異常 だったのである。一般の人にとってやさしい問題から難しい問題の順に並んでいた らしいのだが、私の場合には最初程間違えて、最後に行く程正解だったのである。 どこへ行ってもずっとそう言われ続けていて、日本人はもっと個性を持たねばというのを 自分に当てはめていいものかどうかは、もの心ついたころからずっと悩んでいるのである。

何も考えず、思っていることを書けば国語の点数は零点に限りなく近付いた。 国語のテストで、どう思うかというような場合、「出題者は何を期待しているか」 という問題文に直して解釈しなければならないのを知ったのは、受験が終ってからであった。

そんなことはどうでもいいが、確かに英語もできない国会議員や閣僚や財界人が ゴロゴロいる国というのは異常である。まあ、有名大学や大学院を出ても、 ろくに英語ができない奴がいたりするのだから、名ばかりの高等教育機関が多い。 低等教育機関向けの良い名称はないものだろうか。

英語が上手だと日本では出世の妨げになるらしい。経済界、政界いずれにも詳しい 人がそういうのだから、たぶん日本の社会はそうなっているのかも知れない。 エリートというのは、英語だけではなく、複数の外国語にも堪能で、それらを こともなげに使えるものだと思っていたが、日本だけは違うらしい。

英語なぞ、まあ話せなくても、聞き取れなくても、書けなくても、せめて読めれば 大丈夫かと思っていても、そういう考えでは仕事で必要になる英文を読み飛ばす ことは難しいようである。まあ、突如外人からメールが来るのも珍しくないので、 やはり英語くらいはそれなりに出来ることは必要である。技術畑で暮らしていても、 英語の本で良いのがあっても、英語で読むのは嫌だと思えば、もうそれだけでかなりの レベルダウンは確実である。

総理や大臣が英語で演説しているのを、テレビを通して何度か聞いたことはある。 確かに、ほとんどの場合、こんなので外交も糞もあるまいと思われるレベルであった ことは確かだ。官僚が英語で話す場所にも偶然同席したことがあるが、はっきり言って かなり下手であった。まあ、国際協力事業団で所長の話を英語で聞いたときには、 非常に簡単な英語で、私にも分かる話し方で、それで内容もあった。こういうのは 本当に素晴らしい。

英語オンチに国を任せるのは、これからの時代非常に危険なことは間違いない。 どんな組織であろうと、トップの方に登りたいのなら、英語くらいは出来て当然 というか、そうでないと手遅れであることは確かである。もちろん、英語はただ コミュニケーションの道具であって、目的ではない。目的もなく、英語を勉強 させる日本の英語教育は、とんでもなくゆがんでしまっている。今では、企業 でも、英語を重視するところは多い。ビジネスの過半数が海外という企業も 珍しくないのだから当然である。

こんなことをくどくど書いているより英字新聞を読んだり、英語の放送を 見たり聞いたりする方がよほどためになるので、ここで終える。この本は 確かに面白いので読んでもいいが、実際には貴方自身が英語を身につけてしまう方が はるかに有意義であろう。


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