書名 印刷はどこへ行くのか 著者 中西秀彦 発行日 1997年3月25日初版 発行元 株式会社晶文社 頁数 四六判、187頁 定価 1800円(本体) ISBN 4-7949-6300-9 本書は、同じ出版社から出た 『活字が消えた日』 の続巻として書かれている。
活字、つまり活版印刷、あるいは鉛文化(?)とでも言えばいいのだろうか、 それに別れを告げ、コンピュータを使った印刷現場の状況を、現在進行形で伝 えるものである。
氏の一番の主張、あるいは目標は、オンデマンド印刷である。必要なときに 必要な部数だけの本を印刷できるようにしたい。『欲しい人に欲しいだけ、確 実に』ということである。読みたい人が現れたら、1部からでも印刷したい。 それを、コンピュータ技術によって実現することが当面の中西印刷の目標であ る。
このオンデマンド印刷、本当に私も欲しいのである。例えば、私の著作で絶 版になったもので、現在ホームページで全文掲載している 『Cプログラミング診断室』 であるが、これなども、100部単位くらいで印刷出来るのなら、ちょっと 印刷しては、20部単位で一部の書店で委託販売してもらうことだって可能な のであるが、今の印刷および書籍流通システムではどうしようもないのである。
また、父中西亮の話が良く出て来る。実践的文字蒐集家であり、 中西亮コレクション として知られ、現在 国立民族学博物館に保管されている。 それらの資料は 民博のこちらにある が、民博へのインターネット接続は非常に状態が悪いので、イメージが多く ならざるを得ないこのような貴重な情報は、実はうまく見られない。中西印刷の サーバーに置いてくれたら、どれだけ皆が助かるかと思う。
それにしても、本書中で何度も出て来る、父中西亮の言葉
文化は、技術が進歩することによって水準があがらないかん。技術の進歩に よって、文化が衰退するんやったら、それは進歩とちがうは、本当に印刷分野だけではなく、日本語情報処理全般に言える重要なもの であろう。それだけに留まらず、とくに近年の科学技術の進歩の有り方にも通 じるものがある。この点については、別の本の読書感想文でまた書こうと思う。1997年6月11日