ホームページ掟本
書 名理系白書
この国を静かに支える人たち
著 者毎日新聞科学環境部
シリーズ講談社文庫 ま−56−1
初版2003年6月 講談社
発行日2006年6月15日 初版第1刷
発行元株式会社講談社
定 価571円(本体)
サイズ文庫判 339ページ
ISBN4-06-275435-5

本書は、毎日新聞に連載されたものが単行本になり、さらに文庫になったものである。 こういう道筋を経ているので、延々と売れつづけ、入手したものは文庫本の5刷である。

現在、学生の理科離れは確かに激しい。 しかし、日本をここまでの先進国にしてきたのは、 日本には優秀な理系の人、技術者、研究者たちがいたからこそである。

技術が社会を変えるのは間違いない。 もちろん、馬鹿な使い方をすれば、社会を変え、地球環境を変え、人類滅亡に導く可能性もある。 科学技術があってこそ、現在の豊かな日本が存在するのだが、 そんなことは、団塊の世代以上しか意識にないのかも知れない。

冒頭は、理系と文系の生涯賃金がどのくらい違うかの説明から始まる。 その差は、約5000万円で、東京でのマンション一戸分に相当する、と。

国会議員や大企業の社長の理系の率が出ているが、日本は諸外国に比べて 極めて低く、良くて半減、ふつうはそれ以下になっている。 本当は、科学技術を知り、人間社会も知ることで、初めて将来を予測でき、 優れた判断ができると思うのだが、どうだろう。

国会でのIT系の議論など、まったくどうしようもない議論(?)でしかない。 理解できない人々が集まって、議論し、決定するのだから、間違った結論が出るのは当然だ。 国会に限らず、官僚の世界でも多く起っているのは言うまでもない。 おかげで、対応が遅れて、無駄に人が死んだりする訳だ。

日本では役員室などに週刊誌が置かれていても科学雑誌が置かれていることは殆どないという。 海外では、科学雑誌が置かれているのが普通だとか。 科学的な一般教養はできるだけ排除したい国なんだろうか。

その他にも、理系がいかに報われていないか、理科教育はいかに無視されているか、 独創的な研究がいかに少ないか、なぜ少くなってしまうのかなどが延々と述べられている。

本書は、理系白書、つまり白書なんだから、現状をしっかり調べて、 世の人々に知らせるのが使命だろうが、ここで終っては勿体ない気がする。

理系、文系が適当な割合いで混在することが社会として正常な姿だと思うのだが、 理系人間が激減してしまった社会の将来は大丈夫なのか相当に不安がある。

もちろん、理系と文系、あるいはそういう二者択一的な考えが存在すること自体も ずいぶん古臭い考えである。(これにも言及していた)

理系学生を何とか増やそうという試みは行われているが、 いまのところ小手先の対応でしかない。 まだ、本気で理系が必要だと思っている公的組織など無いのではなかろうか。

今、一番必要なのは、発言する理系人間、行動する理系人間だろうか。

2007年4月24日


ホームページ掟本