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書名 五体不満足
著者乙武広匡(おとたけひろただ)
発行日1998年10月20日
発行元株式会社講談社
頁数四六判、270頁
定価1600円(本体)
ISBN4-06-209154-2

この本を読む前にテレビで見たりしていたので、これを読む前に免疫ができ ていたし、他の情報も入っていたのであるが、それでも読み始めると凄い本で あることが伝わってくる。

本書の表紙であるが、著者が車椅子で横断歩道を渡っている写真になってい るのだが、手足がなく、車椅子の上に胴体と顔だけがあって、顔がカメラに向 かって、つまり読者に向かって笑っているのである。たぶん、何の知識もなく この写真を見ると、きっとギョッとするに違いない。題名が『五体不満足』と いうことで注目を引くことはもちろんだが、『五体不満足』な体で笑みをたた えているところが何とも言えない。題名以上にショッキングである。

多くの書店で平積みどころか、ワゴンセールなども盛んであるので、一度は 表紙くらいは見ておいて損はない。本書は既にとんでもないベストセラーになっ ていて、200万部も突破しているらしい。著者の自伝的な内容になっている のだが、広告とか著者の知名度ではなく、内容で200万部を突破した本は本 当に珍しい。過去最高記録を更新することも十分に考えられる。

構成および内容は次のようになっている。

第1部 幼年期・小学校時代 車椅子の王様
生まれてから、小学校終わるまでであるが、ここがなかなか凄い。 著者もそうだが、それ以上に両親の対応が何とも凄いと言うか、 参ったというか、いわゆる世間で言うところの障害者への対応 という感じでは全くないところがいい。その両親があってこそ、 脳天気で目立ちたがり屋で、手足がないという特長を生かして のびのびと育つことができたのであろうが、凄い親を持ったもの だと思う。日本には殆んど存在しないタイプの親だろう。

第2部 中学・高校・予備校時代 全力疾走
都立戸山高校というのは、どういう訳か私にも若干の縁があり、 戸山祭という文化祭には毎年のように行った。といっても、著 者が戸山高校を卒業してからだから、直接会った訳ではない。
しかし、著者の存在は、当時の戸山高校を変えた、現在では伝説 の人になっているらしい。著者のいた当時の戸山生は違ったという ことだ。ちなみに、都立戸山高校というのは、都立高校の中では レベルのかなり高い高校であるが、せこせこと勉強するタイプの 学校ではなく、相当に脳天気な高校だと私も思う。そういう点では、 著者とは非常に相性の良かった高校ではなかったかと思う。

第3部 早稲田大学時代 心のバリアフリー
現在、早稲田の政経学部に在学中であるが、サークル活動を熱心に 行っており、地元の商店会と共に行っている RENETなどの活動を中心に 書かれている。

障害者の書いた本だが、とにかく明るく脳天気に読むことができる本であり、 それでいて障害者の事も分るようになるという、一石二鳥にも三鳥にもなる本 である。感動しやすい人は感動し過ぎて読み進められないかも知れないが、内 容は軽くないのだが軽く読み流すことも出来る本である。ルビもたくさん振っ ているので、小学生でも読むことが十分可能である。

これは「おすすめ本」である。


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