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書名ローテクの最先端
はハイテクよりずっとスゴイんです。
著者赤池学
発行日2000年10月19日 初版1刷
発行元 株式会社ウェッジ
頁数四六判、373頁
定価1800円(本体)
ISBN4-900594-37-7

ここで言っている「ローテク」というのは、町工場みたいなところで、機械を相手に 物を作るような技能のことである。 先端科学技術とか、先端医療、宇宙航空関連など、大企業などの研究所などが 中心になって進んでいることは確かなのだが、それらを支えるには実際には実験 装置とかの物を作る人が必要なわけである。その物には、高精度や高難度が求め られるのだが、実は多くの町工場とか、職人の腕に支えられているのである。

こんなことは、確かに知っている人には当り前のことだが、今の日本にはそれらを 忘れた人があまりにも多いように思う。有名大学ですら、理論や技術を教えるのを 忘れて、金転がしだけを教えたがるようなところもあり、かなり寒気を催すような 状況に日本はなっていることは確かである。

たかが、20年程度しか持たないボロ屋しか作れない建築などは論外である。 私の生家は、私が生まれたときには200年位経過していたようであったが、 未だにつぶれてはいないようである。

日本の基幹産業の要の部分で、結局は自動化できずに職人芸に頼っているところは 多い。また、それらの職人芸をなんとか自動化できないかと取り組んでいるのが、現 在の自動化の水準ではないだろうか。

誰かが組み立てたコンピュータを、原理も知らずにただ使っているだけでは、 所詮できることは限られよう。実際に組み立てたりばらしたりすれば、さまざまな ことが体で覚えられる。それは、機械だけでなく、コンピュータでも同じだと思う。 玩具でも何でもいいから、蓋を開け、内部の構造を調べてみようという人の減少は 非常に困ったことであり、国の将来に不安が残る。

本書では、多くの町工場とか、企業内の職人組織などが紹介されている。 本書で紹介されているのは、いずれも飛びきりの職人であり、ここまでできれば、 そりゃハイテクよりずっとスゴイのは間違いない。職人というより、『匠』という べきだろう。いずれも、教育に熱心であり、長い時間をかけて人を育てようという ことに精魂を込めている。中途半端なレベルはロボットに置き換わったり、海外 生産に移行してしまうのだが、世界中でここしかできないという技までになれば、 そう簡単にはつぶれることもあるまい。また、そういうレベルにまで到達、つまり 一芸に秀でれば、他にも応用がどんどん効いてくる。 いずれにしろ、何事も、高いレベルを目指さねば話にならないということであろう。

終章に、今までの教育は3R(読み=Reading、書き=wRiting、そろばん=aRithmetic) であったが、これからは3X(情報を探す=eXplore、表現する=eXpress、交換する=eXchange) も重要になるというのがあった。20世紀までの教育は3Rであったが、これから それではどうしようもない気がする。3Xは、インターネットの普及とともに 非常に重要な能力として評価されねばならないだろう。

本書を読んでの感想は、ソフト開発の世界こそ、いまだに職人芸の世界そのものである ということだ。物を作る方は、ずいぶん自動化が進んだが、それに比べると、 ソフト開発の自動化は遅々として進んでいないと思う。 ソフト開発は、ローテクに比較してまだまだ個人芸であり 匠の世界なのだが、そういう認識すらまだ少ないようなローテク以下の部分が 多いということを世間一般が知らなさ過ぎると思う。


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