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シリーズちくま新書338
書名ロボット入門
つくる哲学・つかう知恵
著者舘 すすむ
発行日2002年3月20日 初版1刷
発行元筑摩書房
頁数新書判、206頁
定価680円(本体)
ISBN4-480-05938-5

著者の漢字表記についての解説

ASIMOやAIBOが出てからというもの、急にロボットに活気が出てきたようだ。 私自身、どういう因果か、ロボットというか、精密機械の範疇と思われる分野に 巻き込まれて久しいのであるが、最近はちょっと係わりが少なくなっていた。

小さなコンピュータが非常に高性能になり、センサー技術も向上し、ロボットを とりまく環境は大幅に良くなったと思われる。決まり切ったことを繰り返し行う ロボットから、もうすこし様々なことができるロボット、工場に置いて、人が近づけない状況で 使うロボットから、自宅に置いておくことも可能なものも可能になりつつある。

というような状況を踏まえ、本書は、NHKの「人間講座」の『ロボットから人間を読み解く』 をベースに加筆修正などをして出来上がったようである。

実際、著者は、ロボット工学や バーチュアルリアリティの研究者である。

こういうたぐいの本は、技術だけにつっ走った本とか、極めて浅い啓蒙にもならない書籍が 多くなりやすいが、過去、現在を技術面はもちろん、社会的な面をも深く書いているのはさすがである。 本書で扱っているロボットという範囲は、かなり広範である。昔は、ロボットというのは、 1つの個体であるのが大前提だったのだが、通信技術とりわけインターネットの進歩により、 テレイグジスタン(遠隔地のロボットの中にあたかも入ったように、あるいは自分の体が遠隔地で 動き回るような感覚や動作の実行)が非常に重要になってきた。

技術的なことは、たぶんどの本を見ても、だいたい同じようなことが書かれているのではないかと思う。 本書では、ロボットがどんどん賢くなったときのことについての検討などもかなり詳しい。

ロボットに判断能力をどんどんつけていくと、そのうち人間を排除してしまう危険性についても 言及している。というか、過去にもそういう言及はあったが、実際にロボットがどんどん高度化 してきたので、そろそろそういう法制度などの検討も必要な時期ではないかというところまで及んでいる。

生命科学がどんどん進んでしまい、様々な問題が発生しているが、それと似たこと、あるいは それ以上のことが充分考えられるのである。善良なロボットばかりなら良いが、実世界には 犯罪や戦争があり、それらにロボットが使われる可能性が少なくないのである。 20世紀末までは、そのようなことは技術的にもコスト的にも難しかったが、 これからは、国家レベルではなく、企業、さらには個人レベルですら、悪意を埋め込まれた ロボットを利用して悪巧みを実行できるのである。

本書は、専門家だからこそ書けた入門書として、ぜひ読んでおきたい啓蒙書であろう。

2002年5月14日


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