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永久に完成しない本

1995年11月8日

私の仕事というか、遊びというか、生活の糧というかは、下手なプログラム を作ったり、しょうもない読んでもなんの得にもならない、せいぜい笑いの種 とか、暇潰しくらいにしかならないのであるが、そんな本を書いたりしている のであります。

昔、といってもたった十数年前までは、原稿用紙にパソコン(当時はマイコ ン)のこととか、日本の教育は滅茶苦茶じゃないかとかいうようなことを書い ておった。すると、東京都教育委員会かどっかから苦情が来た。内容について の文句ではなく、「理系の人間が縦書きの文章を書くとはどういうこっちゃ」 という、理系の人間を人間とは思っておりませんという批判をして来た。こう いう人間の給与まで、私の税金で賄われるのかと思うと、一応理系の人間かも 知れない私としては腹が立ちますなあ、というのは今回の話とは全然関係ない のである。

さて、私はそんな訳で本とかを編集部のオダテにのってしまって書いちゃう のです。もちろん、最近はパソコンとかワープロとか、とにかくフロッピィー 入稿なのであり、文章部分については、まあ大体書いた(打った)通りのもの が本になるのです。だから、私が間違った漢字を使ったことに気がつかないと、 編集部でも気がつかないことが多く、あるいは私のことだから、わざと間違え ているに違いないと善意に解釈して下すって、結局誤字のまま出版され、本屋 に並んでしまったりするのであります。

でも、文章部分については、昔に比べればメチャンコ楽になったのである。 太古の昔は、原稿の文字を鉛の「活字」を拾って、並べて、ページを組み立て てなんてやっていたらしいが、そんな昔のことは知らない。

私が印刷とかかわるようになってからは、写植という方法が主流である。初 期は手動の写植で、まあ、和文タイプライタを打つような調子で、手書きの原 稿を清書していたのである。まあ、そのうち電算写植が中心になり、今や私の 本に関する限り、MACでのDTPが多い。だが、私はMACも持っていない し、編集とかレイアウトなどのセンスもないので、エディタで作ったテキスト ファイルを編集部に渡して本にしてもらっているのであります。

本には、文章以外に、図とか絵とか表とか、とにかく文章以外の部分もあり まして、この部分が実はよく問題になるのであります。DPTになってからの トラブルはいつもこの部分についてであります。

実は、拙書の『Cプログラミング専門課程』でも、 図の部分で非常に苦労したのである。本を見ればすぐに分かるのであるが、 この本の図は非常に単純なのであります。だから、普通なら、こんなもん、 ホイホイとできるではないかと思うでしょう。 でも、この簡単な図を作ってもらえなくて出版が2か月も遅れてしまったのであります。

こちらは、図の元になるラフを出したのであります。初校(最初の校正)の ときは、まあしょうがないかと思って、赤ペンで指示したのでありますが、何 度指示を入れても全然直らない。直しを女性の方が何度も運んできてくれれた のであるが、

永久に直らない

と観念して、ついに編集部に乗り込んで、

全部のゲラ(校正刷り)を出版社のゴミ箱に突っ込んでしまった。

まあ、あまりの出来の悪さに、編集部もあきれ果て、編集作業を編集部自身 でやってくれて、すぐにできてしまい、本になり、店頭に並べることができま した。

今の出版においては、出版社の中の編集部でDTPの全てを行っているとこ ろは非常に少なく、編集プロダクションという、たいていがマンションの一室 という極小会社が内職的に作っております。まあ、我輩の本も最初はそういう 所に依頼された訳であります。そして、以上のような経過をたどったのであり ます。

かような苦渋をなめましたので、二度とこんなことはいやだと思い、ポスト スクリプトを勉強して、もはやDPTソフトでは操作できない形にして渡すよ うにした。だがしかし、敵も八方手をつくし、何とか可能な操作はないかと考 えぬき、色々されてしまった。おかげで、手元に3冊分のゲラがボツになって 本箱のスミに眠っている。A4サイズであるから、そのうち裏紙としてプリン タ出力にでも使ってやろうというみみっちい考えを巡らしている。

とにかく、編集作業をされればされる程、誤りが急激に増加するので、いか にして編集作業をさせなくするかに頭を使っている今日この頃である。頑張り ます、とかいって一所懸命(一生懸命)に働く人ほど、ジャカスカ誤りを入れ てくれて、それでもって私に余分な仕事を発生させるんだよな。

その昔、某出版社にいたころ、安い費用で本を作るという印刷所に仕事をや らせたら、永久に本は出来なかったもんなあ。良い印刷所に出したら、よい飲 み屋には連れてってくれるし、間違った原稿を渡してもちゃんとした本が出来 上がるし、「うちで印刷しているポスターでーす」とかいって、有名歌手のポ スターなどをいっぱいプレゼントしてくれたりでした。コンピュータの世界も ピンからキリまで筆舌に尽くしがたいほどの差がありますが、印刷とか編集の レベルも同様でありますなあ。

なんとか世の平和と安全のために、仕事をさせない方法を考案しようと 日々努力しているのであります。


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