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ブラインドタッチができなくなるための本

1996年7月9日

コンピュータに触るためには、どうしてもキーボードが早く打てなくてはな らない。ゆっくり、のんびり打っていたのでは、なかなかプログラムを打ち込 むことができないではないか。

そういうこともあって、速く打てるように練習したかというと、そういうこ とは全然ない。そもそも、コンピュータの世界に入る遥かに前の学生の頃に、 すでに機械式タイプライタを、ガシャンガシャンとブラインドタッチできるよ うになっていた。

中学1年の英語の授業。最初の1学期の間だけ、英語の出来そうな女性の英 語の先生であった。図書館へ遊びに行ったとき、図書館の準備室に、博物館に 置いてあるような、キーが丸い形をしたタイプライタがあった。そして、その 英語の先生が時々打っていた。まあ、興味本位で打ちたかったので、じっと眺 めていたら、「打ってみたら」と言われた。そして、なんと、教則本も貸して くれた。

こういうことで、真面目だった私は毎日図書館に通って、タイプライタをす ぐに覚えてしまったかというとそうではない。どうも機械式のタイプライタは、 指が絡んで同時に2つのキーを押すと、活字のついたタイプライタの腕が絡ん でしまうのである。これを時々解きほぐさなければならないのである。イライ ラすればするほど指は絡み、タイプライタの腕も絡んでしまう。

さすが、これには参った。それに、打ち間違いをすると、修正をしなければ ならない。戻してから、間に修正紙を挟んでから同じ文字を打ち、修正紙の白 を用紙に叩きつけ、それから正しい字をまた打つのである。とてもじゃないが、 こんな面倒な機械、私の手に負える代物ではない。

それでも、格好をつけるのは好きであったから、タイプライタを買ってもらっ て、あれこれタイトルとか名前とかを打つのに使っていた。まともに英語を打っ たことなどなかった。更に格好をつけて、フランス語なんてものを打ったりし たことがある程度が、コンピュータに溺れる前までのキーボードの経験である。

コンピュータを使いだしてからは、毎日毎日、RUN とか LIST とか、コンピュー タに指令を出していたら、よく打つ単語だけはめちゃんこ速く打てるようには なったようだった。

ところで、皆さんは、当然ブラインドタッチできるんでしょうね。私も、こ んな変な経緯でできるようになってしまった。

しかし、本屋に行くと、キーボードの打ち方の本がたくさんあるのだ。とに かく、キーボードを見なくても、ある程度の入力には困らない程度に打てるよ うなレベルにまで上達できる本らしい。少なくとも、表紙とか、まえがきには そんなことが書いている。

しかし、中を開いて見ると、びっくりして、本屋で卒倒しそうになってしまっ た。よくもこんな無茶を書けるもんだと思ってしまった。コンピュータの本で いい加減なのはいっぱいあるが、キーボード練習本に比べたら、どれもまだま しだ。ブラインドタッチの本は、全部が冗談で埋まっている。

−−−− 1冊目 −−−−

「Giraffe(ジラフ)」といいながら、人差指で「G」のキーを打鍵
「Flower(フラワー)」といいながら、人差指で「F」のキーを打鍵
という感じで打鍵練習をしましょう、という本がある。AからZまで、全て のキーについて単語を思い浮かべながら打てと言う。それも、英語の単語を打 つ練習のときだけでなく、ローマ字入力するときにも、そのようにしてやれと 書いている。

とてもこんな難しいこと、私には出来ない。よくもこんな不思議なことを考 えるのがいるものだ。出来ることも出来なくなる筈だ。

−−−− 2冊目 −−−−

「FだJださあ来いさあ来い」fdajdasakoisaakoi
「ファジイで粋で最高だ」fajiideikidesaikouda
「ここはどこわたしはだれ」kokohadokowatasihadare
「奥の細道僕の近道」okunohosomitibokunotikamiti
たったこれだけを延々と練習すれば、全部のキーを覚えることができ、どん な文章でも自由に入力できるという本がある。

たった4つの文章を馬鹿の一つ覚えで打てと言うのには参ったね。これでは 拷問と同じではないかと思うが、この本売れているらしい。こんな苦労まで世 間の人はするのであろうか。本当に勤勉だ。勤勉すぎて、とても打てるように なれるとは思えない。

−−−− 3冊目 −−−−

2ページ見開きに、キーボードの絵と両手の指の絵が描いてある。しかし、 キーは四角い枠だけである。それで、いままでに出て来たアルファベットを、 その絵の中に書けという。

それも、本全体に1回ではなく、何度も何度もこういうページが挟んである。

キーの位置は、頭の中で、どう並んでいるか暗記するものと捉えているよう だ。この問題が解ければその項目は済んだことになる。もう呆れ果てて、言葉 も出ない。

もちろん、私はこの問題を解けない。それぞれのキーの位置を頭で覚えてい ない。指で覚えているだけだから、私は落第だ。

−−−− 4冊目 −−−−

びっしりと、入力練習の問題が並んでいる本がある。これだけしっかり練習 せよということは、超高速キーパンチャー養成ギブスではないかと思う本があ る。

つまり、これは、昔のタイプライタ教則本そのものである。たとえローマ字 入力編となっていても、方針はタイプライタ時代のものである。

昔は、決して打ち間違いをしてはならなかった。そういう時代なら、しっか りと練習しなくちゃならんだろうが、今の時代にそんな練習方法をやるなんて ナンセンスと言おうか、馬鹿といおうか、無駄以外の何者でもない。まあ、そ んな練習をするくらいなら、もうちょっと他のことに時間を割いて欲しいもの である。

イヤイヤ、世の中、ネクタイ締めて、難しい顔をしながら電車の中でWindows の本を読んでいるのがうようよいるのだから、こういう拷問の極致のような本 でも大丈夫な方々も多いのかも知れぬ。


世の中では、こんな非常識なキーボード練習本を見ながら、毎日練習に励ん でいる人がいるのである。だから、当然キーボードをマスターできずに、キー ボードアレルギーが蔓延するのである。

如何に酷い本しか無いかは、想像を絶する。まあ、本屋で立ち読みでもして、 確認されたし。しかし、非常識な本ばかりなので、卒倒したり、立腹したり、 はたまた笑いころげたりしないように、十分に心の準備をしてから立ち読みを するように。


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