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プロジェクトを体験しながら学習する教育にも大差あり

2008年3月6日

今も昔も同じなのだが、コンピュータ技術者、IT技術者が足りないと言われている。 とくに、ちゃんとした教育、実践的な教育を学校がしていない、 いや企業の中でもしていないという話は、私がコンピュータ技術者になってからずっと続いている。 もちろん、今後もずっと続く、つまりたいした改善はされないだろうと非観的に予測している。

とくに、ITがどんどん高度化しているので、それに対応する教育をちゃんとしなくちゃいけない、 これからのIT技術者は勉強が大変だ、学習量が多いので大変だという話(噂、思い込み?)がある。

現実には、ちゃんと育つ人はそだち、それなりの人はそれなりで、 駄目で落ちこぼれる人は落ちこぼれるという面は、全然変化していない。 昔は、コンピュータ、ITの様々な分野を幅広く知っていることが必要だったが、 今は分野が細分化されてしまい、何でも知っていますなんて人はいないし、 その必要もない。まあ、1つの分野だけでなく、複数の分野に詳しい方が有利な程度に過ぎない。

考えてみれば当然のことだが、IT技術がどんどん拡大を続けるに従って、 人間の脳も進化するかといえばそんな馬鹿な話はない。 100年、1000年程度で、人間の脳の性能がさほど変化する筈がない。 脳の脳力にあわせて、適当に皆知識を付けているだけに過ぎない。

さて、そんなことはどうでもよく、IT教育、プログラム開発能力を育てるための 大学、大学院の最近の取り組みについて考えてみよう。 「大学は全入、大学院は粗製乱造時代を迎えたか」 が前回の話題で、PBL(Project Based Learning) について批判的なことを書いた。

しかし、1つだけで評価しては不味い、他も見なくてはといので、 他の成果発表会にも参加してきた。 実は、文部科学省も、PBL(Project Based Learning)も、実践的な教育と判断し、 支援などをしているようで、複数の大学で実施されているようだ。 来週も、その発表会があり、でかけてくる。 実践的な教育ということで、経団連もからんでいるようだ。 経団連にとっては、大学が実践的な教育をちゃんとやってくれることを期待している筈である。

というので、先週は、K大学の成果発表会に行って来た。タイトルは少しちがうのだが、 意図していることは、PBL(Project Based Learning)そのものである。 PBLとは、実際に何らかのプロジェクトチームを作って、 実際にプロジェクトを体験しながら学習しようというものである。 1つのプロジェクトに複数人の学生が参加し、必要に応じて社会人、 プロジェクトの発注者が参加することもある。 この場合に、各人がプロジェクトチーム内で何らかの役割りを果すことで、 実際に企業で行われている仕事(プロジェクト)を体験でき、 実践的な学習ができるという訳である。

理屈はそうであるが、学校で行う場合に、色々問題がある。 社会では、費用、お金が動く訳である。しかし、学校で実施する場合、 このあたりの評価がなかなか非現実的になってくる。 大学なので、学生への評価は、単位、成績ということになってしまうのだが、 これが曲者である。

企業がソフトを開発する場合には、何らかの必要があってやっている訳である。 新入社員研修のために、使うことのないプログラムの開発というのもあるかもしれぬが、 ほとんどは、使うこと、あるいは何らかの調査とか研究目的でやっている。 要するに、開発する必然性が存在するし、開発に失敗すると様々な損害が発生する訳である。 要するに、企業の仕事には、報酬とリスクが常に存在する。 もちろん、社会的責任やら、会社の面子やら、失敗するとまずい理由はいくらでもある。

大学の場合、立場がまるで違う。 教育なので、失敗は大いに許される。 いや、企業でも、ある程度は許されるし、そうでなければ技術の修得は困難だ。 大学での実践教育でしっかり失敗を体験してから社会に出て来てくれるのが理想である。

しかし、それだけだと、本当にしょうもない無意味な実践的教育になる。 使われないプログラム、開発した本人たちすら使用しないプログラムを作って、 作成意欲が沸くだろうか。 行うべき様々な作業は体験できるであろうが、それはあくまでお勉強のために過ぎず、 緊張感のないものになろう。 要するに、社会とのかかわりのない実践的教育という、 どこが実践的なのか意味不明のことが行われるのである。

しかし、先日参加したK大学での、 静岡県立大学数学研究室(すーけん) の成果発表は非常に良かった。 現実に社会が必要としているものを作り、さらに延々と何年にもわたり機能拡張したりで、 プログラムを進化させるところまで到達していた。ある程度のお金も動き、 それで研究室のコンピュータが良くなり、成果発表会への交通費も出たりで、 まことに上手く動いているようであった。

代表的なサイトが 全国少年少女草サッカー大会であり、 大会の時には相当のアクセスになるようで、負荷分散も行っている。 実は、アクセスが多くなり過ぎて落ちたことがあり、負荷分散されているようだ。

こうなるには、実は相当の準備機関があり、パックアップ体制もしっかりしていた。 詳細をここに書くときりがないので省略するが、 現実の社会とのかかわり、プレッシャーの度合が実に見事であった。 多過ぎてもいけないし、少な過ぎても駄目で、その匙加減がすばらしかった。 また、数年にわたり実施しているので、PBL(Project Based Learning) 自体のやりかた も上達しているように感じられた。

コンピュータ技術とか、個々のプロジェクト運営技術は問題がないわけではないが、 PBLの一番外側の枠組み、骨格は、今まで見た中では圧倒的に優れていて、 多くの大学にとって参考になろう。

「すーけん」の発表は予想外であり、 このような実践的な教育も日本に存在していたのは、本当に驚きであった。


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