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佐藤愛子



書名戦いやまず日は西に
文庫集英社文庫 さ−4−42
初出1995年3月海竜社刊
発行1998年6月25日
頁数231ページ
定価480円
ISBN4-08-748794-6

もう、本書執筆時点で70歳を越えている訳だが、未だに戦いを続けている ようで元気さは衰えを見せないようである。

『戦いすんで日が暮れて』というのが直木賞になった作品であり、本書の題 名はそれを受けたものである。『戦いすんで日が暮れて』は読みたいと以前か ら思っているのだが、見当たらない。文庫本として出たこともあるのだが、既 に廃刊のようで、入手できない。一度、図書館で見つけたのだが、借りること のできないところだったので、そのままになっている。

本エッセイ集の「何がおかしい!」を読んでいて、以下の一節が気になって しまった。

しばらく真直に走ったら、バスは急に左折した。乗客はまた一斉に左に傾く。 次は右折。右に傾く。運転手を怒鳴りつけた老人は怒り顔のまま。‥‥‥
と書かれているのだが、左折したら、一斉に右に傾くはずなんだけれどもと 思って読むのは、佐藤愛子の読者としては邪道かと思いながら読み進んだ。

「ああ、人生」という題のエッセイの始まりが

世田谷区太子堂に住むようになったのは、昭和三十一年の‥‥‥
とあったので、ん、こんなところに、つまり私もよく通るようなところに住 んでいるのか、やっぱり、と思ってしまった。もっと分かりやすく言えば、世 田谷区三軒茶屋付近に住んでいるということなのである。茶沢通りで買物をし た後、娘をつれて世田谷線沿いに歩いたりとか、よく分かり過ぎて参る。

他のエッセイを読んでいても、国立小児病院が出てきたりして、なるほど、 なるほどと思ったりしていたので、多分そのあたりに住んでいるなとは見当が ついてはいたんだが。

さて、本エッセイ集の感想であるが、いつもと同じであるが、年をとったの か元気度がちょっと落ちてきているのかな。

1997年6月30日


書名我が老後
文庫文春文庫 さ−18−2
発行1997年3月10日
頁数206ページ
定価380円
ISBN4-16-745002-X

元気に毎日腹を立て、その内容をそのままエッセイにして生活の糧にしてい るお年寄りになってしまった作家の日常が書かれている。まあ、日常生活その ままを書いても、それが原稿になり、読んでて面白い、痛快とは、さすがとい うか、怒りにも年期が入っていて、私のような若造には足元にも寄れない。

今回のは、家庭で飼っている動物への怒り、および年取った動物への哀れみ や同胞意識などが綴られているのである。

まあ、読んで、笑って、それで元気が出るかも知れないという本である。

1997年6月17日

書名死ぬための生き方
文庫集英社文庫 さ−4−40
初出1993年8月海竜社
発行1997年2月20日
頁数218ページ
定価440円
ISBN4-08-748586-2

佐藤愛子も、もう年を取った。佐藤愛子が賢兄と書いている遠藤周作も亡く なってしまったのであるが、本書はそれよりも前に書かれたものである。

もう長い間生きてきたので、もう阿呆らしくて怒る気にもなれない、という 感じで書かれている。

教科書通り、模範的人生くらいつまらないものはない、ということが人生の 実例をまじえて書いている。私は私、人は皆異なるし、人生変化がある方がい いではないか、変化のない人生なんて、とくる。そして、当然、様々な事柄に ついて、ビシバシと書かれる。これが、読む人に快感を与えるのである。

さて、「成人式。三十歳論」というのがあって、当今の若者には20歳の成 人式は早すぎる、30歳にしろということであるが、そんな議論はたいして面 白くない。

それより、成人式の式典で、知事、市長、区長、町長、村長などが祝辞を 「長々と」述べるのをじっと聞いていないで、おしゃべりばかりしてうるさく てしょうがないと、その知事、市長、‥‥‥が怒っている、とある。

これをテレビで取り上げたら、元京大教授のM先生が、

「話を聞かせられない方が悪い‥‥‥」

とあって、なるほどM先生なら、そういうことを言いそうだと納得してしまっ た。ちょっと話が飛ぶが、今の日本の地方自治体のホームページを見たら、長の 自己満足以外の何物でもないホームページが多く、きっと話をしても退屈であろ うことが想像できる場合が多い。

最後に、「こんな生き方もある」と題して、既に亡くなられた人々の話がある。

たいした女−−−平林たい子
男のデリカシー−−−色川武大
ただ1つの思いで−−−松本清張
こんな死に方もある−−−川上宗薫

どうしようもない愚弟と書いている川上宗薫の話はちょっといい。

書名上機嫌の本
文庫PHP文庫 さ−13−3
初出1992年3月PHP研究所より刊行
発行1996年5月15日
頁数201ページ
定価440円
ISBN4-569-56896-3

あの、怒りまくっていた佐藤愛子も本書を執筆した時点で68歳である。も う年ではあるし、娘は結婚して出ていってしまうし、もうこうなったら、いつ もにこにこ上機嫌で、みんなに愛されるおばあちゃんにならなければと心を入 れ換えて暮らしはじめた。

そうそう、愛子という名前は、誰からも愛されるようにということでつけら れた名前である。

だから、どんな災難、たとえば講演会に行って、1時間も2時間も話した後、 担当者は一杯のお茶も出さずに、駅まで親切に送ってくれたり、タクシーまで 呼んででくれたり、新幹線の乗り場まで案内する。しかし、お茶の一杯も出し てくれないので、からからになった喉を潤す一杯のお茶が飲みたいがために、 自分で売店で缶入りのお茶を買うことになってしまう。これを怒ってはいけな いと、年寄りをたしなめてくれる。

とにかく、若い人には親切にして、うまく老後をすごすためのことを書いて いる。なんてのは嘘で、佐藤愛子にそんな文章書ける訳がない。

この本は、上機嫌に怒りまくっている本である。まあ、本人自身の老人ボケ と時代についていけない落ちこぼれぶりについても、明るく書かれている。

この本を読んで、佐藤愛子に同調するようになったら、年寄りの仲間という ことも言えるようだ。

楽天的で、向こう見ずにに生きれば、離婚、倒産、何も怖い物はないだろう。


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