文庫本のホーム

弘兼憲史


 
書名加治隆介の政治因数分解
文庫講談社文庫 ひ−27−5
初出1995年3月講談社より刊行
発行1998年8月15日
頁数248ページ
定価686円
ISBN4-06-263850-9

社会派漫画家(代表作は『課長島耕作』かな)として有名な弘兼憲史の連載 『加治隆介の議』を、細かい因子に分解し、個々の因子について分りやすい説 明を加えようとした物である。したがって、本書は、ストーリー性という面は ぐちゃぐちゃになっていて、そういう読み方はほとんど出来ない。

因数分解してしまったため、個々の項目は分りやすいが、分りやすくて面白 さが半減しているって感じかな。でも、国会議員会館の各議員の部屋の描写な どは実に正確だが、ちょっと違うかな。各国会議員に与えられる部屋の広さは、 記述にもあるように約40平方メートルで、小さなマンション程度である。だか ら、真面目に政治をしようとする政治家にとっては資料を置くのすらままなら ない程度の広さで、あれではねぇ、という感じである。本書に描かれているよ うに綺麗に応接セットを置くことができる程のゆとりは殆んどないと思うが。

本書が書かれたのが村山内閣のころということもあり、政治情勢が今とはちょっ と違うが、当時の混乱状況をベースに書かれている。その中で、加治隆介が官 房長官になり、混迷した政局に対処しようとする矢先、北朝鮮の核ミサイルの 話になり、アメリカの対応も含めて緊急課題になってしまうのである。実際に、 最近、北朝鮮から数発物体が飛んできて日本近海にちゃぽんと落っこちたよう であるが、偶然かどうか当たりすぎていて恐い。

首相官邸、首相公邸がいかにボロボロかという話は実にいい。国会議事堂前 辺で降りると、いっぱい警備員がいる。近所のビルから首相官邸を見下ろした こともあるが、周囲の立派な建物に比べると情けないような状況である。霞が 関あたりの官庁街と比較してもガクッと落ちる感じがする。器が落ちているか ら中身も落ちているかどうかは知らぬが、そうかも知れない。

本書の巻末の締め括りの言葉が良かったから、ここに引用しておこう。

 また、『加治隆介の議』では、官僚政治に関して「政治家は官僚に対抗でき るだけの見識と資質をもたなければならない」といっている。が、これはその まま、我々にもあてはまる言葉である。  我々も、政治と政治家を見抜くだけの見識と資質を持ち合わせたいものである。


文庫本のホーム