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井上ひさし


書名ニホン語日記
文庫文春文庫 い−3−18
初出『文藝春秋』に隔週連載
平成5年6月に単行本(文藝春秋より)
発行1996年7月10日
頁数297ページ
定価450円
ISBN4-16-711118-7

井上ひさしの本は意外と読んでいない。しかし、氏は日本語を探求し続ける 作家として有名であり、氏独特の実践に基づいたというか、日本語学者とは全 く異なる視点からの日本語は面白く、ときどき読んでいる。

とにかく、資料とかを分析するのではなく、ちゃんと街へ自分の足で出て言 葉を採集する執念のようなところが面白い。

例えば、駅に置いている伝言板に書かれる言葉の研究である。これについて は、連載小説を毎日毎日伝言板に書くマメな奴がいることは前から知っていた が、それをちゃんと取材してメモを取る氏の姿勢には参ったね。

山手線のあちこちの駅に3日間通いつめて、伝言をいちいちメモして分析し たようだ。まあよくやるとは思うが、考えてみれば、そういうことをしてちゃ んと飯の種にしているんだから、そういうことをやるのも仕事のうちなんだか ら、必要以上に感心する必要もないか。

「不動産広告ぐらいおもしろい読物はめったにない」とおっしゃる。

枕言葉で最上級は「羨望の」であり、
「いま羨望の田園都市沿線」
と使うのだそうだ。

一段落ちたのが「人気の」で、
「人気の東横線綱島で‥‥‥」
となるのだそうだ。

そのうち、言葉につまって、「将来性豊かな」とか「発展が望まれる」とい うような正直な枕言葉になっていくのだそうだ。東京近郊では、千葉県の不動 産業者の中に正直者が多いのだそうだ。


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