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なだいなだ


書名信じることと、疑うことと
文庫ちくま文庫 な−2−10
初出『いま、人間として』
1982年6月〜1984年12月
単行本1985年5月径書房刊
発行1996年5月23日
頁数212ページ
定価540円
ISBN4-480-03157-X

私の読書感想文を読みに来るくらいの人だから、「なだいなだ」について知 らないとは思われないが、一応解説しておくと、精神科医であり作家である。

同じ慶應の精神科医というと、東北大学医学部出身で慶應の精神科の助手に なった北杜夫がいる。 が、作風は全然違う。なだいなだは、さまざまな問題に正面から取り組んだ本 が多く、内容的にもねちっこい。書き方は、分かりやすいんだが、しつこいと ころがある。

本書は、嘘について書いたものである。マスコミで報道されると、どんな嘘 でも本当と信じてしまう者がいる。ジャーナリズムは、嘘を見破るどころか、 嘘を広めるのに一役買っていたことなどが書かれている。

マスコミの報道の多くは、僅かの調査で分かることすら調査せず、より多く の注目を浴びそうなタイトルを付けている‥‥‥なんて当たり前すぎることが 書かれているのであるが、世間の人間というものは、書かれたもの、報道され たものは正しいと信じる。大本営発表のころと何の変化もないのである。

まあ、私のように、何も信じない、事実だけが事実と思っている人間には、 ぜんぜんどうってことは無い本である。でも、人を説得させなければならない ときとか、相手の考えを把握する必要に迫られることもあり、そういう時の参 考になりそうなことはいっぱい書いてあった。

「昔は良かった」と相手がいうのを、どのようにして本当に「昔は良かった」 のか、それとも思いすごしかを正すのは参考になった。

まず、相手がいう「昔」を、より正確に特定する。そして、その時代の状況 をチェックして、現在と比較させる。一番重要なことは、こちらが「昔は良かっ た」を否定するのではなく、「昔は良かった」と主張する人間に、「昔は良かっ た」という主張の根拠を1つずつ拾いあげさせ、結局は根拠のなさに本人が主 張を取り下げざるを得なくなってしまう。

これが一番今後の参考になりそうなところだった。でも、この書き方では、 著者の主張が伝わらない。もっと知りたい方は、立ち読み、座り読み、借りて、 あるいは購入して読んで下さい。


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