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斎藤由香


書名猛女とよばれた淑女
祖母・齋藤輝子の生き方
初出小説新潮 2007年8月号〜12月号
単行本新潮社刊(文庫ではありません)
発行2008年2月20日
頁数256ページ
定価1400円(税別)
ISBN4-10-467803-7

本書は、2斎藤由香の祖母、輝子について書かれた本である。 齋藤輝子には、2人の息子がおり、斎藤茂太も北杜夫もそれぞれ輝子についての本を書いている。 北杜夫の書いた『母の影』を1997年に読んだようだが、 あまり覚えていない。

輝子は、昭和59年(1984年)12月16日に亡くなっている。 天真爛漫、自由奔放、超マイペースで、事件が起きれば起きる程強くなって、 猛女と呼ぶに相応しくなった。

輝子は、歌人齋藤茂吉の妻である。茂吉は山形の生れで、東京の大病院、浅草医院の跡継ぎとして 上京し、養子となり、その後、大病院の娘として生まれた輝子と結婚した。 輝子は、淑女にふさわしく、学習院女子部に進み、名家の令嬢として何不自由無く育った。

輝子は、大の海外旅行好きというか、日本になんかいられないというたちで、 80歳を超ても、エベレスト、アンデスなどを歩き回り、世界108ヶ国を旅した。 入国可能な国ができると、とにかく一番乗りをしたいという感じで、 誰も言ったことのない未開の地に好んで行った。

茂吉とは非常に仲が悪く別居していた時期もあるが、茂吉が晩年弱って来ると、 可能なかぎりの介護をしたという。どんな強い者にも負けず、困ったものには必ず手をさしのべたという。

輝子の人生は波乱万丈であった。病院は何度も火災に有った。 また、ダンスホール事件と言う、今で言うスキャンダルもあって、 当時の雑誌や新聞にもあれこれ書かれたようである。

しかし、80歳を越すまで非常に元気だったようで、普通なら酸素ボンベがいるような エベレストやアンデスでも、自由に行動できたようであり、本当の猛女である。 年を取って、子供夫妻と海外旅行をしたら、輝子だけが元気で、世話をするためについていった 子供夫妻が、逆に世話をやかれる始末だったそうな。

とにかく、破天荒な内容である。歌人齋藤茂吉、猛女輝子を親、祖父母に持てば、 文人になるには申し分ないところであろうか。 文人は普通の環境ではなかなか生まれるものではないだろう。

書名窓際OL 会社はいつもてんやわんや
文庫新潮文庫 さ−60−2
初出『週刊新潮』
単行本平成17年12月新潮社刊
発行平成19年4月1日
頁数333ページ
定価476円(税別)
ISBN4-10-129572-5

つい2冊目を買ってしまった。 全然頭を使わなくても読めるので、つい買ってしまう。

それにしても、この窓際OLの活躍は脅威的だ。 ウォールストリートジャーナルに載るは、マカの原産地のアンデス高原まで 出掛けるはなど、次から次へと何でもやってしまう。

これは、サントリーという会社の「やってみなはれ」精神のなせる術であろうか。 会社内の様々なことが、どんどん書かれているようだ。 この程度のことで精力剤マカの売り上げが激増するのなら、社員は満足だろうか。

役員、部長、課長などのことがあれこれ書かれているのだが、 なかな書きっぷりがよい。 巻末の解説には、小ネズミ部長が、直々に書いている。 ただし、題名は「もはや諦めの境地」だが。

著者もあとがきで、ニートに向けて「会社ははちゃめちゃで楽しい」と書いている。 入社にあたり、社長自らが「奇人変人は大歓迎」というくらいだから、 吉本興行と同じではないかと思ったら、 サントリーは大阪の会社であった。

このくらい何でもありでなければ、 ビジネスも成功しないというビジネス書でもあるのだろうか。

2007年4月13日

書名窓際OL トホホな朝ウフフな夜
文庫新潮文庫 さ−60−1
初出『週刊新潮』
単行本平成16年4月新潮社刊
発行平成18年10月1日
頁数314ページ
定価476円(税別)
ISBN4-10-129571-9

人間、いつも頑張っていては体が持たない。 ちゃんと力を抜くために、ちゃんと力が抜ける本はないかと、 取引き先へのお使いがてら1階に入っている本屋をぶらついていたら、 この本が目についた。

こんな思わせぶりな本の題名は良くあることだが、帯を見ると、 さくらももこの絵があり、祖父は斎藤茂吉、父は北杜夫とある。 帯の裏側は、阿川佐和子が、「世間の人々が、小説家の娘が みんなこんな具合だと思ってしまうのではないかと心配なのである。 だから、ここではっきり申し上げておきたい。普通はもう少し、まともです。」 と解説していた。

これを見て、あまりまともでない本だと確信して買ってしまった。 斎藤茂吉の歌は知らないが、北杜夫なら色々読んだし、その中に 娘の話もときおり出て来ていた。

エッセイたるもの、いや文章全般に言えると思うが、あれこれ変に細工せず、 思いっきり伸び伸びと書くに限ることを教えてくれる本である。

大学卒業して入ったのが、サントリー。 酒量は楽々ウイスキーボトル1本というのは入社条件だろうか。 それはさておき、サントリーは色々話題に事欠かない会社であり、 様々なことをやっている。

今は、サントリーの健康食品事業部で、 精力剤マカのPRレディのようだ。 そして、この本は、精力剤の担当になっていかに大成功(前年比6000%の売上増)を記録したそうだ。 そのあたりの顛末がいろいろ書いてあって、とっても面白い。 ついでに、サントリーという会社がどういう会社かも垣間見えてくる。

さすが、作家の娘はやることが違うな、と観念してしまう本である。

2006年11月4日


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