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司馬遼太郎


書名 この国のかたち 四
1986〜1987
文庫文春文庫 し−1−64
初出単行本1994年7月 文藝春秋刊
発行1997年2月10日
頁数269ページ
定価450円
ISBN4-16-710564-8

著者は昨年(1996)逝去された。晩年は病気療養で大変だったのだろうか、 本書の最後の篇「日本人の二十世紀」は口述筆記に加筆したもの、とある。

本書は、著者のいう、特に日本の歴史上のただ1つの大失敗という昭和初期、 つまり太平洋戦争に日本がつっ走っていってしまったことに対する分析、批判 が中心をなしている。

その中でも、「統帥権」についての話が多い。国の全ての権力を軍部が握っ たいきさつについてである。国民、国会、天皇すべてを蔑ろにして軍部がやり たい放題をやり、結局太平洋戦争で亡びたことについてである。

司馬氏であるから、幕末から太平洋戦争まで、いかにして破滅に向かったか、 向かわざるを得なくなったかの分析がある。まあ、嘘に嘘を次々と上塗りし、 収拾がつかなくなって、破局しかなくなった。何だか今と似ていないか。

軍事行動には秘密が伴う。政府や国会に情報を流せば、敵にも知られてしま う可能性が高いので、後から知らせればよいという帷幄上奏(いあくじょうそう) が認められていた。

軍なら当然といえようが、しかし非常な危険を含んでいる。軍はこれを利用し、 次々と事変をおこし、政府・国会は、それを知ってびっくりすることの繰り返し であったとか。

という話であったが、これって今の日本で起こっている様々な問題にも十分 通じるものがあるのではないだろうか。本書はバブル崩壊後に書かれていて、 「知らしむべからず」という考えが、今もそのまま残っていることの危険性を 最後の方では伝えたかったのではないかとの印象さえある本である。

1997年4月11日

書名 この国のかたち 一
1986〜1987
文庫文春文庫 し−1−60
発行1993年9月10日
頁数285ページ
定価400円
ISBN4-16-710560-8
書名 この国のかたち 二
1988〜1989
文庫文春文庫 し−1−61
発行1993年10月9日
頁数282ページ
定価400円
ISBN4-16-710561-6
書名 この国のかたち 三
1990〜1991
文庫文春文庫 し−1−62
発行1995年5月10日
頁数260ページ
定価450円
ISBN4-16-710562-4

雑誌「文藝春秋」の巻頭の随筆を2年で1冊ずつ単行本にしてきたものであ る。司馬氏は、ついこのあいだ逝くなられたので、すでに刊行済みの第5巻 (1994〜1995)が最後になると思われる。文庫化されているのは、まだ以上の3 巻のみである。

本書は、膨大な歴史上の人物を書いてきた著者の、日本の歴史に対するさま ざまな切口を10ページ程度の短い随筆の形で示してくれる。中学や高校の歴 史の授業は本当に詰まらなかったが、歴史の裏表を書いた本書は、歴史に全然 感心のない私にも十分に楽しめた。

歴史関係の長編ともなると、登場人物や時代背景を頭に入れなければならず、 殆ど勉強を強要されるようで頭が痛かったのであるが、随筆風に歴史を語って くれるのは、歴史音痴の私にも気楽であった。特別な前提の知識は一切不要で ある。安心して読まれたし。


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