清水義範

角川文庫/清水義範


書名家族の時代
文庫角川文庫 し−11−12
初出1995年6月読売新聞社
発行平成10年8月25日
頁数349ページ
定価533円
ISBN4-04-180413-4

東京で、ちょっと財産を持っている家族のおじいちゃんが起こす騒動である。 おじいちゃんが、おばあちゃんと離婚するのであるが、生活はこれからも仲よ くやっていくというのである。家族の他の者たちは、おじいちゃんの遺産がど うなるかをめぐって色々と作戦を立てたりするのであるが、最後は。。。

さて、こういう話で、ストーリー的には有り触れた内容であり、それほどの どんでん返しがあるわけでもない。面白いというか、文章を書く上で参考にも 出来るかと思うのは、清水の描写である。せりふが多いのであるが、せりふの 間には普通の状況説明もあるが、本音の説明、心の中で思っていることがグサ グサという感じででてくる。

せりふは、あくまでも「建前」が中心で、その間に本音がちりばめられてい て、その部分で楽しむような本であった。この落差がいいのである。

平成11年1月24日


書名よのなかはきぬぎぬのうつろい
世界衣装盛衰史
文庫角川文庫 し−11−8
初出平成4年5月30日角川書店(単行本)
発行平成8年1月25日
頁数233ページ
定価430円
ISBN4-04-180409-4

本書は、次の2編の作品からなっている。

「偽ビートルズ伝」は、清水義範の学生時代とちょうど重なるのだが、じつ はそのころ文学青年をやっていたので、ビートルズなど知らんわい、なんて感 じで解説が始まる。

途中で、突然、ビートルズファンだった清水義範の妻が出て来て、清水との インタビューがあったりして、非常に清水の身辺の話が多く出てきながら、ビー トルズ内部のゴタゴタをたっぷり、ひねって書いている。

音楽に詳しければ、もっと楽しめたかも知れない。

さて、本書の題名にもなっている「世界衣装盛衰史」であるが、これはこの 100年間の世界的なファッションデザイナー9名についての人物伝である。 ここは徹底的にパスティーシュになっていて、各話を別々の文体で書き分けて いるのであるが、どれが誰の文体なのか殆んど分からなかったが、まあ、面白 ければいいじゃないか。

それはともかく、本書の2編は、清水義範が書いたにせよ、どうも彼の妻の 影響がいっぱいあるのではないかと思う。 清水義範がファッションになぜ詳しいのかは、 「青山物語」 を読むと分かる。要するに、売れっ子作家になる前には、そういう関係の原 稿書きをしていたのである。

そして、そういうファッション関係の会社で働いていたのが清水義範の妻で ある、というのが、「青山物語」の解説の中にあったりする。

何冊も、作品の関連性を考えながら読むのも大変である。


書名まちまちな街々
ニッポン見聞録
文庫角川文庫 し−11−9
初出平成5年8月角川書店(単行本)
発行平成8年8月25日
頁数254ページ
定価470円
ISBN4-04-180410-8

ユーモア職業作家、泥江龍彦(ひじえたつひこ)とその妻の旅行記の形をとっ ているフィクション的ノンフィクションみたいな、つまり、清水義範独特のお ふざけ精神で書かれたものである。

K書店(もちろん角川書店)の金で旅行してしまおう。でも、何か書かねば 出版者から金を引き出すことはできない。それで、いろいろ小細工をしたりす る。

とりあえず珍道中の舞台となるのは、

である。なんといっても、思い込み激しく、独断と偏見で勝手なことが書かれ ているのが良いのである。やはり、あちこちに気を使いすぎて、何を書いてい るのか分からない八方美人のガイドブックとは違い、笑えてくるところもある。

ところで、岡山、倉敷は私の出身地であり、岡山城の記述など、実際より良 く書かれているようでがっくりと来た。

でも、児島にやってきて、マジックで自由に落書ができる下津井電鉄という 日本一線路幅が狭い電車に乗ったことが分かった。もちろん、この電車は今は 廃止されていることもちゃんと書かれていた。この辺はまあまあである。吉備 路を訪ねたときには、私の友人の神社(代々宮司の家)をたずねたんだ。

岡山と広島の違いについての考察は、まあ当たっているかな。岡山は豊かで、 歴史や文化があって、というのはいいよね。さらに、岡山の人間は、広島の方 には全然顔を向けず、大阪など近畿地方の方にいつも顔を向けているというこ とまで書かれていればもっと良かった。

本書であるが、ただのユーモア旅行記ではない。あの清水の観察力で、日本 各地の旅行ガイドには書かれていない真の姿を書こうとしているのかも知れな い。まあ、変わった旅行記として楽しく読めばいいんじゃないだろうか。


清水義範