清水義範

講談社文庫/清水義範


書名虚構市立不条理中学校
文庫講談社文庫 し−31−17
初出 1990年5月『虚構市立不条理中学校』徳間書店
1991年6月『続・虚構市立不条理中学校』徳間書店
単行本1994年10月『虚構市立不条理中学校(全)』徳間書店
発行1998年12月15日
頁数565ページ
定価781円(本体)
ISBN4-06-263929-7

なかなか分厚い本である。そもそも清水義範の本はいつも不条理で、虚構に 満ち満ちている訳だが、今回はそれを中学校という舞台で、教育について皮肉っ た本である。

何を皮肉るかというと、当然のことながら管理教育である。そのための舞台 として、題材が校則であり、地下にコンピュータを駆使した監視装置とか、指 導室といって仕置きの装置がいっぱいあったり色々するわけである。

これが、実際に今までに発生した事件も嘘も多いに織り混ぜ、ぐちゃぐちゃ にして面白く教育を批判したものである。行きすぎた管理教育のため、生徒が 決して目立たないような指導をするのである。

さらに、この主人公は当然作家なのである。この作家は『超現実国語入試問 題集』を出しているのだが、これは言うまでもなく清水義範の『国語入試問題 必勝法』を指している。

ということで、この本に出てくる作家は、明らかに清水義範自身の化身であ り、現実の教育の歪みを示すために、主人公およびその息子と妻が学校で囚わ れの身になったり、主人公が2人を救うために管理教育教師達と戦っていくの である。

というような能書きはどうでもよく、むちゃくちゃなSFとして楽しめば良 いかと思う。でも、現状の教育に非常に肯定的な人とか、教師などの一部には きっと本書で立腹する人もいるかと思う。そういう刺激的な本である。

書名春高楼の
文庫講談社文庫 し−31−16
初出 「小説現代」1993年7月号〜1994年11月号
単行本1995年3月講談社刊
発行1998年5月15日
頁数367ページ
定価590円(本体)
ISBN4-06-263789-8

本書は、希望に燃えて上京してくる青年に起きる様々な出来事を扱った長編 小説である。『春高楼の』という古めかしい題名からも推察できるように、今 から約100年前を想定して、その当時、希望に燃えて東京帝国大学へ入って くる田舎者樋口淳一郎の話である。

著者清水も、もしかしてこのような希望をもって上京してきたのかどうかは しれないが、この主人公も、人生を文学に捧げる決心をするのである。これは、 著者の当時の気持を反映している部分もあるのではないかと邪推してしまう。

100年前の東京帝国大学、講道館、労働運動、そしてその当時の社会風俗 について実に細かく描写されているのであるが、なにしろ著者が清水義範なの で、うかつに読んでいると、騙されてしまう危険性が十分にあるが、なかなか に面白かった。


書名似ッ非イ教室
文庫講談社文庫 し−31−14
初出「小説現代」1989年2月号〜1991年12月号
発行1997年7月15日
頁数304ページ
定価505円(本体)
ISBN4-06-263585-2

「似ッ非イ」と書いて「エッセイ」と読むのである。つまり、本書は「エッ セイ教室」なのである。エッセイの書き方、それもちょっとひねくれた清水義 範の書くようなエッセイの書き方を教えてくれる「教本」なのである。

というのは真っ赤な嘘で、いつもの清水義範流の嘘が詰まったエッセイ集で ある。どうせ嘘だと思いながら読むのであるが、嘘の混ぜ方が面白いので、つ いつい読んでしまう。つまり、清水義範の罠にはまってしまうのである。

そして清水義範はその金で豪邸を建て、日本庭園をしつらえ、白鳥を庭に 放ち、金の鯱を飾っていたりするのである。

本文、最初から嘘と分かるようなことばかり書いてはいけない。かといって、 全部本当のことばかり書いては、なかなか面白いエッセイはできあがらない。 その調合具合は結構勉強になり、 「パソコン生活つれづれノート 」にも生かしたいと思っているのだが、まだまだ私の力では他人を引っか けることができない。


書名スシとニンジャ
文庫講談社文庫 し−31−12
初出「夕刊フジ」'91年2月4日〜'91年8月16日
発行1995年10月15日
頁数337ページ
定価560円
ISBN4-06-263080-X

外人タレントで山形弁研究家のダニエル・カーンてのがいるでしょう。彼は アメリカの田舎者であったが、でも日本に憧れたんだ。特に、日本の寿司と忍 者にあこがれて日本にやってきたのだ。この本は、その話である。まあ、アメ リカ人の多くは、ニューヨークとかロスとかの大都会に住み、東京に来ても都 会ということには決してびっくらこいたりしない。と、日本人の多くが思って いるであろうが、そんなことはない。

アメリカは非常に広く、大部分の州では主要産業が農業で、農場の中でGATE WAY 2000なんてコンピュータを作ってたりする非常にのんびりしているところ である。ソフトもMOO-TIFFという、牛の鳴き声がするのが付属している。まあ、 そんな所に多くのアメリカ人が住んでいる。だから、今でも、日本ではチョン マゲをしていて、着物を着て、刀をさしていると、大部分のアメリカ人が思っ ている。

そう思って日本にやってきたのだが、東京は大都会でびっくらしてしまう。 でも、日本のどこかに、きっと自分の描いた通りの日本が存在すると思って、 あちこち旅をしたのである。

ただ、彼は、アメリカで毎日毎日チャンバラ映画を見るという、とんでもな く武士道精神に惚れ込んでいて、なんとか忍者の修行をしようとするのである。

でも、日本語は、チャンバラ映画で覚えたものだけだから、まあ通じる訳が ない。それでも一人で日本中を旅行していくのであるからにして、事件、事件 の連続だ。

と書いてしまうと、そうとうデタラメな解説になってしまった。

でも、とにかく、この本、めちゃくちゃに面白い。とくに、滅茶苦茶な時代 錯誤に陥っている外人の考えること、それから変な日本語、これらがとにかく 面白い。

私はこの本を持って、昼がかなり過ぎたころ、近くのレストランとは名ばか りの店に入り、一番安いランチ(珈琲付き)を注文してから読み始めた。だが、 困ったことに、あまりに可笑しいので、必死で笑いをこらえていたのだが、が まんできなくなりくすくす笑っていたら、店員や周りの客に変な顔をされてし まった。うーん、この本は、一人でこっそり、忍者のように、誰にも姿を見ら れないところで読むに限る。


清水義範