文庫本のホーム清水義範

新潮文庫/清水義範


書名名前がいっぱい
文庫新潮文庫 し−33−8
単行本平成8年2月新潮社より刊行
発行平成11年5月1日
頁数274ページ
定価438円(本体)
ISBN4-10-128218-8

人間の名前について、あれこれもて遊んだ本である。まあ、かなり罰当たり なもてあそび方をしている。

全部で10編からなっているが、清水義範の本のほとんどを読んでしまったの で、やり口が分かるようになってしまい、もっと面白いのはないかと思いながら 読むようになってしまった。

今回の中で面白かったのは、「第4話 人は死して」という硬い題名である。 妻の母親が亡くなり、葬式があり、戒名をつけてもらわなければならないのだ が、戒名を寺には内緒でつける話である。つまり、戒名料を払わずに勝手につ けるのである。それも、代々内緒でやっているため、先祖の戒名は非常に立派 であり、それらの立派な戒名と見劣りのしない戒名を必死で考えるのである。

そうかといって、だれでも戒名をつけるのに慣れているわけではなく、いろ いろ研究することになり、戒名の研究書を買ってきて、歴史上の有名人物の戒 名の研究にまで発展する。しかし、当然のことながら、不真面目な戒名の研究 にも染まっていくのである。

1999年6月20日


書名戦時下動物活用法
文庫新潮文庫 し−33−6
初出平成4年〜6年『週刊小説』に連載
単行本平成6年6月実業之日本社
発行平成9年7月1日
頁数254ページ
定価438円(本体)
ISBN4-10-128216-1

人を喰った短編が詰まっている、清水義範らしい本である。ただし、他の本 が、次第次第に可笑しくなっていくのと違い、この本の短編は、最初はいつも とおなじように普通の短編にみえるのであるが、盛り上がりのペースがいつも よりは遅いペースで、後半に盛り上げるのであるが、最後の落し方がちょっと 違うようだ。上がり切って、ちょっと下がったところで終りという感じがした。

『栄養伝説』は、世によくいる、健康にいい食べ物で派閥に分けたものであ り、そうだ、そうだと実感もって読める。

『服を買う』というのは、自分のことが書かれているのではとまでは思わな かったが、デパートへ服を買いに行くというのは気が重くなる作業である。あ の気持ち、分からないでもない。

『トライアル・アンド・エラー』は、パソコンを使いこなせないオヤジ達を 馬鹿にした、よくある内容である。もちろん、パソコンソフトの馬鹿に分厚い マニュアルも馬鹿にして書いているのである。題名のとおり、マニュアルをしっ かり読んでから使おうとするオヤジが全然使いこなせなくて、トライアル・ア ンド・エラーでやっていく人間がちゃんと使えるようになってしまうという、 実際のコンピュータ学習では当然のことが書かれているのである。でも、分かっ ていても面白かった。

でも、今回の本、清水義範にしては軽いタッチだったなぁ。


書名陽のあたらない坂道
文庫新潮文庫 し−33−5
初出平成5年4月新潮社(単行本)
発行平成8年5月1日
頁数270ページ
定価440円
ISBN4-10-128215-3

本書は、8話からなっている。各話は完全に別のものであり、共通点は、本 の題名の「陽のあたらない坂道」である。坂道というのは、本当の坂道ではな く、人生の坂道をころげ落ちた人々の話をまとめているので、そういう題名に なっているのである。

第1話 喰わせる理由
第2話 錬金術師
第3話 ロンドンの商人
第4話 山内一豊の隣人
第5話 沈黙の先駆者
第6話 翼よ、あれは何の灯だ
第7話 グレート・スタッフ
第8話 除夜の鐘

第1話は、人類がまだ獣を追いかけ、弓や矢で狩猟をしていた時代の話であ る。当時、大人になったら、ちゃんと狩猟ができなければ、生きていく価値が なかった。

そういう時代に、運動能力がまったくない、どうしようもない大人がいた。 それで、ついに村人が、「おまえは何ができる」と問われたときに、「話がで きる」と答えたのである。「では、何か話してみろ」と言われて、勝手な話を でっちあげて、話したのであるが、それが受けに受けて、毎晩話せとか、別の 村でも話せとか、まるで、現在の清水義範の多作ぶりのような調子になってい くのである。

それで、村人たちに、十分に「喰わせる理由」が出来、しっかり肉などを喰 えるようになり、結婚もしたのである。これでは、益々、清水義範自身のこと を書いていることが明白である。

それで、おめでたい、パチパチという風には決して清水は終らせない。最後 に、きちんと、しっかりと落すのである。まあ、その辺は読んでみてくだされ。


書名パスティーシュと透明人間
文庫新潮文庫 し−33−4
初出平成4年6月実業之日本社(単行本)
発行平成7年10月1日
頁数309ページ
定価480円
ISBN4-10-128214-5

この本は、清水義範の本の中では異色である。題名はパスティーシュとつい ているので、てっきりいつもの調子でいい加減なことを書いているのではない か、それならば買ってみようかと思って買うと大失敗をしてしまう本である。

この本、エッセイなのである。本の裏表紙の解説の末尾には、

清水ワールドへ誘う爆笑エッセイ集

とあるが、これが引っかけであった。また、清水義範の罠にはまってしまっ た。

この本は、今まで、清水義範が、多種多様の雑誌、新聞などに掲載したエッ セイをまとめた本なのである。いつもの、あの爆笑をさそうような話はなく、 真面目なので面くらってしまうのだ。

この本は、パスティーシュの本ではなく、「なぜ清水義範がパスティーシュ を書くか」について書いている本なのである。だから、この本が清水義範の本 の最初の出会いになった人には、本の内容は殆ど分かるまい。他の著作、つま りパスティーシュを少なくとも5冊程度は読んでから読まないと、全然意味の 無い本に成り下がってしまうのである。

つまり、この本は、清水義範が、ひねくれた、ねじ曲がった、しかし面白い 本、パスティーシュを何故書くかの解答なのである。


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