清水義範

集英社文庫/清水義範


書名騙し絵日本国憲法
文庫集英社文庫 し−22−8
初出1996年4月集英社刊
発行1999年4月20日
頁数341ページ
定価571円(本体)
ISBN4-08-747043-1

もうすぐ憲法記念日である。4月は統一地方選挙もあったことだし、ときに は憲法について考えてもいいのではないかと思って買った。「騙し絵」という 枕詞がついているが。

構成は、全文についての21種類の解説があり、シンボル、つまり天皇は象徴 であることの吟味とか、九条の戦争放棄、それから基本的人権の記述はいかに あやふやであり、憲法演芸場からの寄席中継、それからPKOに対していかに 掟を解釈するべきかを議論し、掟は結局はどうにでも解釈できるんだとの結論 にたっするのであった。

というのが解説であるが、これではかなり普通の解説でしかない。清水義範 であるから、それぞれがパスティーシュになっていて、それぞれを何らかのお 笑いの短編に仕上げている。

不真面目に感じる文章であるが、むちゃくちゃ憲法を批判しているとも感じ られるが、それ以上に国会議員および国会や内閣への批判が強い本である。笑 わせながら、結局は言いたいことをしっかり文章中に織り込んでいて、読者に 著者の主張を感じさせないにも拘らず洗脳しちゃおうという、とても深い魂胆 に満ちた本である。

憲法記念日には、是非これを読もう。

1999年5月1日

書名大探検記
遥か幻のモンデルカ
文庫集英社文庫 し−22−7
初出1993年7月集英社刊『遥か幻のモンデルカ』
発行1997年9月25日
頁数257ページ
定価476円(本体)
ISBN4-08-748683-4

本書には、秘境探検が3話入っている。もちろん、痴水幼稚範の作であるか ら、とうぜん秘境探検に同行するなんて絶対ないし、架空の話をただでっちあ げて、いかにも秘境探検小説みたいにするなんてこともありえない。

秘境探検は、探検だけを目的として行くことは金銭的にも大変で、通常ドキュ メンタリー作品としてテレビで放映したり、雑誌に記事を書いたりするのが一 般的である。それで、そういう人々を旅に同行させるのである。このあたりの 全体の構図が、いかにも作家としての清水義範のたくらみがあるようである。

パロディであるから、最後にはどれも滅茶苦茶になるのであるが、2番目の 作品『渾身のアドベンチャー・ロード』は、最初からパロディなのである。活 動的大学教授北見慎一が、実は全然活動的ではなく、アドベンチャーなど一切 しないのであるが、秘境アドベンチャーをいかにもやっているように本や雑誌 に書き、テレビにも出るタレント教授なのである。

そういうタレント教授が、ほんとうの秘境に行かなければならなくなった話 である。そして、最後は、本当に秘境を踏破する‥‥‥なんてことはない。

インターネットなどまったくやっていないのに、インターネットに関する講 演をやったりする大学教授も多々いるようだし、それを聞きにいって納得する 聴衆も後を絶たないようである。探検の世界も同じようなものかどうかは私は 知らぬが、まあ面白い読み物であった。

書名金鯱の夢
文庫集英社文庫 し−22−1
初出1989年7月集英社刊
発行1992年7月25日
頁数311ページ
定価520円
ISBN4-08-749830-1

慶長8年、豊臣家は名古屋に幕府を開いた。これが260年の長きに渡って 続いた長期政権の豊臣幕府であり、その時代を名古屋時代と呼ぶ。

このことは誰でも知っているよね。何、江戸時代で、徳川幕府の誤りではな いかって?

そういう、くだらんことを考える石頭なんぞにはこの長編歴史小説を読む資 格はない。清水義範が書いたのであるからにして、まともな本のはずがないで あろう。とにかく、何でも名古屋を中心に考える著者のことであり、東京に幕 府なるものがあったなんてことは認めていない。名古屋に幕府はあったのであ る。

江戸夏の陣で徳川家が絶滅し、元禄時代には名古屋デザイン博があり、とい うことである。それらは、名古屋城の天主閣の上で反り返っている金鯱(きんこ) が知っている。

著者は、本書を、名古屋人のコンプレックスを返上する小説であると「あと がき」に書いている。「名古屋=田舎」であり、その屈辱を晴らしたとある。

まあ、私としては、「勝手にせい」というところだ。まあ、例によって、勝 手に史実をめちゃめちゃにし、むちゃくちゃなことが書いてある。そう、清水 義範は、デタラメしか書かない小説家なのである。


清水義範