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竹内久美子


書名小さな悪魔の背中の窪み
血液型・病気・恋愛の真実
著者竹内久美子
文庫新潮文庫 た−33−3
初出平成6年4月 新潮社より
発行平成11年2月1日
頁数212ページ
定価400円
ISBN4-10-123813-8

血液型についてあれこれ書いている本である。血液型と性格というものに、 日本では異常なまでに関心がある。とくに若い女性の間では関心が高いらしい。

A,B,AB,O の血液型の割合は、人種によって、地域によって大いに違いがあるが その原因はなんだろうかと色々紐解いていく訳である。その中で、国会議員の 血液型の分類があったが、とくに年寄り議員は圧倒的にO型が多い、つまり当選回数が 多く、首相や大臣になるものはO型であることが非常に多いという。

しかし、どうもこれは性格からではなく、O型は病気にかかり難いという特徴が あり、長生きする者、年をとっても元気な者にO型が多いということの反映らしい。

実験室で長い間飼育していたショウジョウバエと、野性のショウジョウバエが 交配できないくらい異なってしまったことは興味深い。遺伝子の一部が違う訳だが、 そういう種の大幅な変化が実際に起きてしまうというのを確認できるとは。

それにしても、竹内久美子の昔の迫力ある書き方とはちょっと違ってきたような 感じがする。突っ込まれないように、必要以上に仮説だとかの念の押し方というか、 言い訳的になってきたのが詰まらない。きちんと読める人には仮説に過ぎないという 程度の書き方で充分で、それ以上に言い訳が多いと、読んでいて迫力に欠ける。

(2000年1月10日記)

書名パラサイト日本人論
ウイルスがつくった日本のこころ
著者竹内久美子
文庫文春文庫 た−33−4
初出1995年10月
発行1999年6月10日
頁数233ページ
定価429円
ISBN4-16-727005-6

例によって、遺伝子に極度に拘った本である。拘ると言うより、いくつかの 事実から、どう勝手に解釈すると面白くなるかという本であるのはいつものこ とである。

途中までの推論は比較的まともだな、と思うと、こうも考えられるというと ころからどんどんそっちに話が進むのであるが、今回は今までのよりはその傾 向は少なかったような気がするが、私が竹内流の話に慣れたためかもしれない。

今回は、日本人のルーツである縄文人と、後から入ってきた渡来人について 交じりあっているのが日本人であるという話である。そこまでは良いのだが、 それを元に、関西人(渡来人)とその他の人々の文化、思想の違いを説明しよ うというのである。

極めて個人主義的な関西人は、戦争でもし地上戦が沖縄ではなく、大阪で行 なわれていたら、大阪人は戦争などには興味も示さず抵抗もせず、すぐさま 「もうかりまっか」ということで商売の話をするのではないか、との結論(?) である。

かなり当たっているかなとは思う。さまざまな遺伝子を使って、人類につい ての情報を調べることができるようになってきた。そのおかげで、昔学校で習っ たことのうち、誤りだったことも多く発見されてしまった。

この本の推論がどこまで正しいか、なんて野暮な考え方は捨てて、面白い本、 変化のある考え方の訓練でもしてみようかというには良い本である。

この本の内容を信じる、信じない、その他いろいろあるが、そんなことは私 は知ったことではない。この本によると、こういうことを書くと言うことは、 私は関西系、つまり渡来人系になるわけだが、岡山県南部出身だし、姓が藤原 だし、どう考えてもその傾向は強い訳で、超私的範囲をこの本に適用すると当 たっていることになるなぁ。

(1999年7月2日記)

書名浮気人類進化論
きびしい社会といいかげんな社会
著者竹内久美子
文庫文春文庫 た−33−3
初出1988年5月
発行1998年11月10日
頁数222ページ
定価486円
ISBN4-16-727004-8

本書は、題名の通り、浮気の本である。人間だけでなく、動物も含め、動物 行動学の竹内久美子の手になる、動物の浮気のやり方、浮気の防ぎ方、さらに は放置の仕方も含めての分析が行われている。

竹内久美子の主張では、浮気というものは最も脳を発達させることに役立ち、 浮気によって人類は人類になれたのである。つまり、浮気こそ、人類が今日の 社会を築く原動力、エネルギー源になったのである。

もちろん、浮気は後ろめたさがあり、オスはいかにバレないように浮気をす るかに知恵を絞り、言葉巧みに別のメスを口説くかで言葉を駆使し、メスはい かに相棒の浮気を見つけるかのための情報収集のため、井戸端会議を開いて、 近所のメスの言動の中から浮気の臭いを嗅ぎ付けるために言葉が発達したとの 論である。

学校教育の場では、言葉は、獲物を捕まえたり、危険を知らせたり、さらには 習得した技術を周囲に伝えたりするために発達したとあるが、そんなことはサル でも出来るが、十分発達した言葉とはならないのである。

浮気のためには、アリバイ工作とかさまざまなことをしなくてはならないの だろう。こういうことを毎日やっていたら、頭の体操になるのは間違いないし、 説得力もある。本書では、このようなことに努力する言葉巧みな男を「文化系 男」、そうでない口下手な私のような男を「理科系男」と大胆にかつ分りやす く定義している。

こういう風に話が進むだけでなく、ちゃんと遺伝子についての研究の裏付け をしながら解説される。遺伝子は、できるだけ自分のコピーが残るように行動 するのである。子孫を残すチャンスは授精時であり、この時にいかに他の競争 相手の精子に勝つかの作戦が重要なのである。それには、各動物の置かれた性 環境によって戦略が様々のようである。

ところで、人類は非常に子殺しの少ない動物らしい。他の動物では、子殺し はかなり頻繁に行われているらしいが、人間は他の自然界の動物に比べると何 千分の1、何万分の1のオーダーで殺しは少ないとのことである。動物では、 自分の子供を殺すのではなく、自分の子供以外をかなり容赦なく殺すらしい。

とにかく、詳しい解説を書くのは大変なので、知りたい人は読んでくれ。 本書は、竹内久美子のデビュー作といえる本であり、竹内久美子の動物行動 学的著作を楽しむには必ず読むべき本である。そして、楽しい本である。 学問的内容については、各自で勝手に判断するように!

本書を浮気の薦めと捕らえられないこともないが、そのへんは各自で勝手に 処理しよう。

(1998年12月13日記)

書名賭博と国家と男と女
著者竹内久美子
文庫文春文庫 た−33−2
初出1992年8月日本経済新聞社刊(単行本)
発行1996年1月10日
頁数236ページ
定価450円
ISBN4-16-727003-X

またまた竹内流の論が展開されている痛快な本なのである。カカア天下から 国家の盛衰まで、全ては「利己的な遺伝子」に支配さ れているという話である。

■第1章 人は利己的に強調する

ここで面白いのは、「囚人のジレンマ」というゲームである。このゲームは、 2人のプレイヤーが「協調」と「裏切り」と書いた2枚のカードを持っており、 互いの腹を探りながら、どちらかのカードを選び、テーブルの上に伏せておく。 カードは胴元がめくる。

二人とも「協調」なら胴元の負けで、両者3ポイントを得る。両者「裏切り」 を出すと、両者とも0ポイントであり、得点は増えない。一方が「協調」で、 他方が「裏切り」を出すと、「協調」を出した方は0ポイントで、「裏切り」を 出した方が5ポイントを得る。

以上のルールで、たとえば200回繰り返したとき、できるだけ高得点を得 るにはどういう戦略が良いか、という話がある。実際に、コンピュータ上での 多数のプログラム(戦略)での対戦も載っている。

ゲームでも、総ゲーム回数(それもかなり少ない場合、7番勝負など)が決 まっているとか言う場合は、長いつきあいという場合ではない。しかし、人間 の生活は、長いつきあい、長い人生、さらに遺伝子にとっては、所詮人間共は 遺伝子の乗物(ビーグル)にしか過ぎないので、そういうときには裏切るほう がよいのか、裏切らないほうが最終的に有利かを延べている。

そして、この章の結論が、「利己的に協調する」と いう矛盾的なことであるが、理由は本章を読めば分かる。

■第2章 人は利己的に強調する

ここでは、平等がいかに弊害があるかを証明している。そこでは、 阪神タイガースがコロコロと負ける理由は何か、恐 妻(カカア天下)はなぜ必要か、亭主関白は国家にとって必須かを証明してみ せている。

■第3章 家庭と国家

芸者が明治時代の近代日本の成立を支えたのである。芸者なくして近代日本 はありえなかった、という暴論をでっちあげている。なかなか面白い。

■第4章 賭博と国家と男と女

ここで、賭博について、その効用を説く。賭博は、ほぼ人間の歴史と同じ長 さの歴史を持っている。この賭博により、人間は数の概念を発達させてきた。 そして、この数の認識の発達により、経済が発達し、胴元の大親分として君主 たるものが発生したということである。だから、賭博を禁止するなどとんでも ないことで、そんなことをすると、どんどん馬鹿になっていくのである。

さて、賭博と同じくらい役に立たないのが、「学問」である。では、なぜ、 学問などという生活(生産)に役に立たないものを人間はする(利己的な遺伝 子がさせる)のかを最後に書いている。つまり、役に立たないこと(文化)に うつつを抜かすことは、賭博で一夜にして全財産を失ってしまうのを避けるた めの防止策だそうである。だから、一旦金持ちになったら、その財産を失わな いため、賭博以外に趣味を持たねばならない。それが「学問」なのである。

‥‥‥‥なんて解説を書いてみたが、何しろ竹内理論は常識の逆の事ばかり 書いているので、私のように普通の思想の持ち主にはどの程度理解できたか分 からない。だから、以上の解説は無視して、自分で読んで見られるべし。

(1996年2月5日記)


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