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山本夏彦


書名世は〆切
文庫文春文庫 や−11−12
初出『諸君』、『室内』、『文藝春秋』、『ノーサイド』
単行本平成8年1月 文藝春秋刊
発行1999年4月10日
頁数314ページ
定価476円
ISBN4-16-735212-5

『世は〆切』という題名は、だぶん本感想文を読みに来ることの多いプログ ラマとかには耳が痛いかもしれない。とりわけ、私には耳が痛い。週に何本か の〆切が押し寄せてくるので、〆切というものは本当に参る。伸ばせば伸ばし たで、別の〆切と重なって、さらにひどいことになる。

ということはさておいて、久々に文庫を読んだ。それも、すらすらとは読み 進み難い文章の山本夏彦の本をつい選んでしまった。きっと、〆切に追われて いる自分の身の上のため、無意識にこの本を購入してしまったのである。

中身は、苦言の固まりだれけであるが、言いたいことをこれだけ書ければた いしたものかと思う。解説に「80過ぎたらたいていの悪事ははたらいてもい い」とあったが、著者は大正4年(1915)年生まれなので、もう怖いもの はないのであろう、羨ましい。

それから、山本夏彦の文章は、昔の表現が多く、読めない漢字が出てくるこ とも珍しくないのであるが、地下鉄の中やホームなどで読むことが多いので、 分からないところ、読めない漢字があってもどんどん無視して読んでいると、 偶然分かることがある。それに、山本夏彦は同じネタを何度も使っていること があるほどくどいので、その繰り返しで意味が分かってくることもある。

そういえば、明日は雑誌の著者校正の〆切であった。

1999年10月5日


書名日常茶飯事
文庫中公文庫 や−19−1
初出雑誌「室内」に連載
発行1978年4月10日
頁数232ページ
定価420円
ISBN4-12-200530-2

山本夏彦の代表作である。題名の通り、日常の、まあどうでもよい事を取り 上げて、それについて深く鋭く、もちろん臍を曲げて突っ込んでいくエッセイ である。

何しろ天下のへそ曲がりゆえ、およそ世間の一般常識や良識と言われるもの に逆らってみせている。迎合するのがとにかく嫌いらしい。

マスコミは真実など書いておらんし、そもそも真実を書く気などありはしな い。ただ部数を伸ばすがために、大衆に迎合するのみである、とは半ば納得と いうか、実感できてしまう。

小学生用の本は、小学生用の用語しか用いない。それでは、いつまでたって も、小学生は小学生のままである。小学生であっても、中学生の本、大人の本 を読んで、読めなくて困って進歩すると書いてある。

そして、氏の本は、なかなか難しい用語の連続である。しばしば国語辞典を 引かねばならない。国語辞典で済めば楽な方で、漢和辞典を必要とする。まあ、 面倒なので、半分くらいしか調べないが、それでも、氏の本を読むと、知らな い事を多く発見するので、少しは賢くなれたかもしれないと思っている。


書名愚図の大いそがし
文庫文春文庫 や−11−10
初出 I「文藝春秋」平成2年12月〜平成4年12月
II「諸君!」平成元年12月〜平成4年12月
発行1996年7月10日
頁数323ページ
定価460円
ISBN4-16-735210-9

氏の言葉には、「文はウソである」ということがしばしば出てくる。新聞、 雑誌に書いていることは嘘に決まっている。新聞に載っていることは、結局は 部数を増やすための文章にしか過ぎない。あれを真実の報道だと思って読んで は決してならない。 新聞記者は、現場を見て書いているのではない。本社デ スクの顔色を見ながら書いているのである。

まことに、真実を射た言葉である。新聞、雑誌、単行本からコンピュータの 本に至るまで、嘘八百がいくらあるか分かったものではない。なるほど、そう である。若干の文章をひねり損なっている私には、実に身に応える内容である。

それにしても、氏は、原稿用紙数枚で語れぬことはないと言う。そういう糞 文句をいう輩は世に多数いるが、実際に原稿用紙数枚で語ってみせるのである から脱帽せざるを得ない。世間で格好をつけて言っていることは、実は全部嘘 で、虚飾であり、偽善であり、実は違うということを言ってのけるのは痛快で ある。

であるが、氏の文章には、どうにも読めない漢語、あるいは意味の分からな い諺の類が多く、相当に苦労をする。まあ、私の日本語力の不足からそういう 事になってしまうのであろうが、旅先で読んだりするには骨である。辞書を鞄 に入れて旅に出るのは辛い。

氏の本を読むには、まだまだ修行が足りないようだ。


−夏彦の写真コラム−

書名やぶから棒
文庫新潮文庫 や−37−1
初出昭和57年3月新潮社刊行の『やぶから棒』全100編 と昭和59年1月刊行の『美ししければすべてよし』の前半50編
発行平成4年1月25日
頁数361ページ
定価520円
ISBN4-10-135011-6
書名美しければすべてよし
文庫新潮文庫 や−37−2
初出昭和59年1月新潮社刊行の『美ししければすべてよし』 の後半50編と、昭和60年12月刊行の『不意のことば』全100編
発行平成5年6月25日
頁数404ページ
定価520円
ISBN4-10-135012-4
書名良心的
文庫新潮文庫 や−37−3
初出昭和62年11月新潮社刊行の『世はいかさま』全100編と、 平成3年3月刊行の『良心的』の前半50編
発行平成6年7月1日
頁数427ページ
定価520円
ISBN4-10-135013-2


『夏彦の写真コラム』というのは、「週刊新潮」連載のコラムであるらしい。 らしいというのは、私は週刊新潮を読んでないので分からないが、文庫本あと がきに、そう書いてある。

このコラムは非常に短い。1編が2ページ程度である。だから、ついホイホ イ読めてしまう。

さて、内容であるが、何せ、へそ曲がりで、小難しいオヤジのエッセイゆえ、 『へ理屈』がいっぱい詰まっている。些細なことを大層に書いている。書きに くいことをズケズケと書いている。

まあ、世に対する悪口、痛罵の連続であり、まあ眉をしかめる人も多いであ ろう。そんな本だから、読んでいると、あなたの性格も悪くなること必至であ る。まあ、読みたまえ。


山本夏彦(やまもと・なつひこ)

大正4(1915)年、東京下谷根岸生まれ。戦後、インテリア雑誌『室内』 を創刊、今日に至る。
へその曲がっているエッセイ、多数あり。中公文庫に多数あり。


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